伝統芸能通じ防災活動 ムラピ山噴火の減災目指し 神戸のFM局が開催
インドネシアで最も活発な火山の一つとして知られるジャワ中央部のムラピ山(標高2978メートル)。そのふもとの村で、神戸市に拠点を置く多言語放送のコミュニティーラジオ局「FMわぃわぃ」が、防災に役立ててもらおうと地元の伝統芸能に防災の知恵を取り込んだ公演会を開いた。
ムラピ山は2010年の大規模噴火で約30万人が避難したが、その後も小規模な噴火は続いている。
公演会は中部ジャワ州クラテン県クマラン郡にあるムラピ山山ろくのシドレジョ村で先月25日に開かれた。地元のコミュニティーラジオ局「リンタスムラピFM」が協力し、住民80人が劇や踊りなどを披露、約500人が観賞した。
公演会では、大衆演劇「クトプラッ」と歌と踊りの「ジャティラン」を組み合わせ、古くから伝わる防災の知恵やこれまで培ってきた知識を演劇や踊りに取り入れた。
クトプラッでは村人が避難方法を協議する場面などを演じ、劇の合間にジャティランの歌と踊りで、噴火の前兆で動物が山から逃げる様子や災害時にボランティアで活動する人などを表現した。
FMわぃわぃインドネシア事業担当の岡戸香里さんは「ワークショップやセミナーは、若者には退屈で高齢者にはわかりにくいという声があったが、歌や踊りを通じた防災活動は親しみやすく、わかりやすいと好評だった」と振り返った。公演を撮影したDVDを周辺地域の学校などに配布するという。岡戸さんは「伝統芸能の発展とともに防災の知恵も長く伝えられるよう、今後は地元の住民たち自ら公演し、続けてほしい」と話した。
FMわぃわぃは1995年の阪神淡路大震災で、在留外国人向けに災害情報を提供していたことがきっかけで発足。12年10月から国際協力機構(JICA)の草の根事業として、ムラピ山噴火の防災活動を続けてきた。
現地で防災活動などを続けるジョクジャカルタのNGO「コンバイン・ソース・インスティチューション」やムラピ山ろく6村の住民や村役場、現地のコミュニティラジオ局4局と協力。土地に合った防災方法を住民と一緒に考え、減災を目指すワークショップを開いたり、ムラピ山の地元コミュニティラジオ局で防災情報や災害時の放送方法を整備したりするなど、防災システムを構築している。(毛利春香)