日本の安保政策を講話 海自の杉本1等海佐 母校・海軍大で
2003〜04年に海軍大学(南ジャカルタ・チプリル)に留学し、08〜11年には駐インドネシア日本大使館で防衛駐在官を務めた海上自衛隊第12護衛隊司令の杉本雅春1等海佐が9日、同大学で講話し、日本の安全保障政策などについて説明した。自衛官が同大で講話するのは初めて。
杉本氏は冒頭で、東アジアの安全保障環境に関する日本の見方を紹介。沖縄県・尖閣諸島をめぐり、中国との間で続く緊張については、国連アジア極東経済委員会の調査(1968年)で資源の存在が指摘された直後に中国が周辺の権益を主張し始めたことや、12年の尖閣国有化以降、中国公船の領海侵犯が急増したことなど、問題の経緯を説明した。
日本の政策については、北朝鮮の核・ミサイル開発やテロ、サイバー攻撃など、安全保障環境が厳しさを増しているとの認識を示した上で「一国で自国の平和を維持できる国はない」と指摘。「より積極的な活動で国際社会の平和維持や安定、繁栄に貢献する」として、安倍首相が安全保障政策の基本理念とする「積極的平和主義」の考え方を解説した。
講話は、米国やオーストラリア、シンガポール、タイ、インドなどの留学生を含めた指揮幕僚課程に在籍する少佐級(海自では3等海佐に相当)約180人が聴講。質疑応答では、尖閣問題についての質問や、日米同盟の今後の見通し、ジョコウィ大統領の掲げる「海洋基軸国家」の受け止め方などを尋ねる質問も出た。
杉本氏は、7〜10日の日程でジャカルタを訪問している海自外洋練習航海に、指揮官として参加。訪問に合わせて講話が企画された。(道下健弘、写真も)
進む人的交流 「仲間として関係強化を」
海上自衛隊は1997年に初めて海軍大学に留学生を派遣。杉本氏が入学した2003年以降は3年ごとに1人が留学し、10カ月間の指揮幕僚課程で学んでいる。杉本氏や、同じく留学経験のある小宮浩司防衛駐在官のように、駐インドネシア大使館に駐在し、同国に関する知識や人脈を生かした情報収集や二国間交流に携わる自衛官も出てきた。
杉本氏は古巣での講話後、「今でも会えば話しができる人たちが多くいる。こういう流れは今後も絶対に途切れてはいけないと思う」と、人的交流の意義を強調。今回の大学訪問でも、インドネシア海軍の同期生複数人と顔を合わせ、親しく言葉を交わした。昇進して軍の要職に就く幹部も増えており、「そういう人が増えれば、仲間として、インドネシアと日本の関係がもっと強くなる」と話した。
一方、防衛大学も長年にわたり、インドネシア人留学生を受け入れている。最近では、防衛省防衛研究所の一般課程で学ぶ研修員も訪日している。杉本氏は「人材育成やメンテナンスなどは日本が得意とする分野で、インドネシア側にも意義がある」と話した。