KPK職員が反旗 委員長代行の敗北宣言に 警察汚職 捜査引き渡し

 南ジャカルタ地裁での予審敗訴を受け、汚職撲滅委員会(KPK)はブディ・グナワン容疑者の汚職捜査を最高検に引き渡した。タウフィックラフマン・ルキKPK委員長代行は「敗北を受け入れる」と事実上の敗北宣言。捜査引き渡しにKPK職員は猛反発し、庁舎前で開いたデモで「尊厳をもって死ぬ覚悟はできている」などとルキ委員長代行に反旗を翻す声明を発表した。

 ルキ委員長代行とプラセトヨ検事総長は2日、バドロディン・ハイティ国家警察副長官(次期長官)やテジョ政治・法務・治安調整相、ヤソナ法務人権相らと南ジャカルタのKPK庁舎で記者会見を開き、捜査の引き渡しを発表した。プラセトヨ検事総長は「最高検による処理でKPKと警察の対立が終結するものと期待する」と話しており、汚職の実態解明よりも対立の収拾が優先されるおそれがあると懸念されている。
 最高検は国家警察犯罪捜査局に捜査を引き渡すことも視野に入れる。犯罪捜査局はブディ容疑者と親しいブディ・ワセソ局長が率いており、アブラハム・サマッド委員長(停職中)らKPK幹部の不正疑惑捜査で中心的な役割を担った。
 ルキ委員長代行は、最終手段としてやむを得ず捜査を引き渡したと地元メディアに説明し、「敗北」を宣言。現在36件ある別の汚職捜査に注力する方針を示し、「これで降伏した訳ではない」と釈明した。
 しかし、この敗北宣言に猛反発しているのがKPKの職員だ。多数の職員らは3日、KPK庁舎前で抗議デモを展開。マイクを握った職員は「尊厳をもって死ぬ覚悟がある。汚職犯に自らを売り渡して恥をさらすことはしない」などと語気を荒らげた。別の職員は「真実が踏みにじられたことに抗議する」と語った。職員の一部には、予審敗訴を受けた対応の再検討と汚職撲滅に向けた捜査方針の詳しい説明を求める請願書を幹部に提出する動きもある。
 南ジャカルタ地裁は、不正があったとされる時期にブディ容疑者がKPKの捜査対象となる立場になかったなどとして容疑者認定を無効と判断した。地裁判断には最高裁判事経験者らが妥当性を疑問視するなど法曹界でも意見が割れている。

■週刊誌テンポも標的に
 警察を支持する市民団体が汚職やマネーロンダリング(資金洗浄)を禁じる法令に抵触している恐れがあるとして、週刊誌テンポを警察に告発していたことがこのほど明らかになった。
 同誌は19〜25日号の特集で、国家警察幹部の不正蓄財疑惑を捜査情報とともに報じた。市民団体は特集に銀行口座の情報が含まれていることを問題視。情報を掲載したテンポとともに、情報を漏えいしたとしてサマッドKPK委員長(停職中)や金融取引報告分析センター(PPATK)のユヌス・フセイン前長官ら幹部も告発した。
 ユスフ・カラ副大統領は同誌に対する捜査に慎重な姿勢をみせており、報道評議会の意見も踏まえて対応を検討するよう指示した。(田村隼哉)

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