油抜き取る海賊 過去最多 南シナ海などで昨年
南シナ海などインドネシア近海でタンカーに乗り込み、石油製品を抜き取る海賊事件が昨年、過去最多となる12件起きたことが、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センターのまとめで分かった。
タンカーに乗り込んだ犯行グループが船員を拘束した後、別に用意したタンカーを横付けし、ポンプで油を移し替える手口。「サイフォニング」と呼ばれる。昨年は未遂事件も3件あった。同センターによると、サイフォニングの被害は2011年に初めて確認され、12年の被害は1件(未遂3件)、13年は2件(同1件)だった。
犯行グループのほどんとが銃やナイフで武装している。今年の既遂事件で発砲はなかったが、アスファルト運搬中の船に誤って乗り込んだとみられる事件で船員1人が頭を撃たれて死亡。別の未遂事件でも、銃撃で1人が首に負傷した。
石油製品価格の高止まりが、被害増加の背景にあるとみられる。狙われるのは船舶用燃油など、すぐ利用できる精製済みの油が多い。被害のうち半数以上が総トン数2千トン以内のプロダクトタンカーだった。
積荷の中身や航行ルートを把握した上での計画的な犯行で、闇市場などにも繋がりのあるシンジケートが絡んでいるとみられる。同じタンカーや、同じ船会社の船が複数回狙われたケースもあり、犯行グループは船会社内部の事情に通じている可能性もある。
被害は南シナ海が多いが、マラッカ・シンガポール海峡やカリマンタン島沖のジャワ海でも起きている。(道下健弘)