高校舞台に手探りで奮闘  文化交流担う日本語教師 日本語パートナーズ第1期

 日本政府は東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との文化交流を加速させる目的で、各国の日本語教育機関へ2020年までに3千人超の「日本語パートナーズ」を派遣する。インドネシアには最多の約2千人を予定し、第1期生として昨年9月に25人が着任。2期生23人も1月18日に赴任する。高校の現場で奮闘するパートナーズの姿を追う。
                                       
■派遣地域を拡大
 安倍首相は2013年12月に、日・ASEAN特別首脳会談で文化交流拡大政策「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト〜知り合うアジア〜」を発表。20年の東京オリンピック開催に向け、日・ASEAN地域の芸術・文化双方向交流と日本語学習支援事業を展開することを発表した。
 その目玉になるのが、ASEAN各国の高校の日本語教育に携わる教師や生徒を支援する「日本語パートナーズ」だ。14年度はインドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムに計105人を派遣。派遣国も順次ASEAN各国で広げていく予定だ。
 インドネシアでは第1期25人が、首都圏(ジャボデタベック)内の普通高校(SMA)16校、職業訓練高校(SMK)12校に9月27日から派遣されている。2校の高校で兼務する人もいる。
 2015年度は第3、4期で計100人程度を派遣する。第3期以降は西ジャワ州や東ジャワ州、バリ州、ジョクジャカルタ特別州にも派遣地域を拡大する予定だ。

■さまざまな経歴
 第1期25人は、20代〜60代までの幅広い年齢で構成。卒業前に海外での経験を積むため、大学を休学した人。会社を退職して、新たな道を探すため参加した人。日本語教師としての経験を積むために参加した人。定年後の社会への恩返しで参加した人など背景もさまざまだ。25人のうち日本語教師の有資格者は17人。残りの8人も大半がボランティアなどで日本語を教えた経験を持つ。
 国際交流基金は昨年8月、国際交流基金の関西国際センターで約1カ月間研修を実施。午前中に派遣国の言語を学び、午後は文化紹介の実習や日本語の教授法についての授業などを受けた。日本語を教える以外にも日本文化を伝える役割を担っており、文化紹介のやり方に対しても時間を割いた。

■日本文化を紹介
 ある参加者は「年齢もバックグラウンドも違う者同士が、お互いに感化し合い、絆を深められた。文化紹介は初めてだったので、研修でのやり方が現地でも役に立っている」と話す。
 現場に出て約3カ月が過ぎた。パートナーズ同士で連絡を取り合い、各高校の授業や文化紹介のやり方をシェアしては、各高校の日本語教師と授業の改善に役立てているという。高校によっては生徒が日本語の教科書を購入していなかったり、日本語教師との役割分担についてのコミュニケーションが難しかったりするという問題もある。
 だが、大むね現場では貴重な日本人教師として、現地の日本語教師、生徒に受け入れられている。ある現地の日本語教師は「日本人が来てくれたことで目に見えて生徒のモチベーションがあがった」と話す。
 教壇だけではない。ジャボデタベック(首都圏)地区の日本語教師会が開催した日本文化祭にも、日本語スピーチコンテストの審査員として参加するなど、学校以外でも日本の文化紹介に尽力している。

■貴重なネイティブ
 国際交流基金が3年ごとに実施している調査によると、インドネシアの日本語学習者数は2012年には中国に次ぐ世界第2位の87万人に達した。国内の日本語教育機関は2346あり、その大半が中等教育機関(中学・高校)だ。
 だが、現場では日本語教師が不足しており、教師1人が生徒数百人を教えている学校も多い。また日本語学科を卒業した教師でも日本語能力が初級レベルで、生徒が効率的に学べる環境にない学校も少なくない。
 このため日本語パートナーズは貴重な日本語のネイティブスピーカーとして期待が寄せられている。国際交流基金の小川忠東南アジア総局長は「日本語パートナーズが現地教師や生徒と交流することで、教師の質の向上など好影響をもたらす。生徒にも日本人と会話できる貴重な場を提供できる」と期待する。(藤本迅、写真も)

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