警察長官にブディ氏指名 大統領、「身体検査」せず

 ジョコウィ大統領は10日夕、視察に訪れた東ジャワ州スラバヤ市で、次期国家警察長官にブディ・グナワン教育実習所所長を指名する考えを示した。汚職撲滅員会(KPK)や金融取引報告分析センター(PPATK)が汚職関与の可能性を調べる「身体検査」を経ないスピード決着に、疑問の声が上がっている。

■汚職監視団が批判
 大統領は「大統領権限により私が選んだ」と語り、自らの判断であることを強調した。アンディ・ウィジャヤント内閣官房長官は「私も(任命手続きの指示を受けた)プラティクノ国家官房長官もブディ氏を指名する理由について質問しなかった。(長官指名は)大統領権限だからだ」と話している。
 大統領の発言を受け、汚職監視団(ICW)などからは、KPKやPPATKによる「身体検査」を経ない指名を疑問視する声が上がった。ICWのエメルソン・ユント氏は日刊紙コラン・テンポに「適任を選びたければ身体検査を実施すべきだった」と指名の過程を批判した。
 前政権でスタルマン長官が指名された際にはKPKが事前に同氏の資産などを調べ、報告書を提出している。ジョコウィ大統領は、昨年の組閣ではKPKとPPATKによる候補者の身体検査の結果を踏まえて人事を決定した。
 アンディ内閣官房長官は長官候補の「身体検査」について、規定にないため、省略しても問題ないと説明している。ただ、閣僚人事についても「身体検査」の規定はなく、判断の違いに疑問が残る。
■メガワティ氏の元警護官
 ブディ氏は2001〜04年のメガワティ政権でメガワティ元大統領(闘争民主党=PDIP=党首)の警護官を務めた人物で、メガワティ氏のほかユスフ・カラ副大統領とも親しい関係とされる。
 ハスト・クリスティヤントPDIP幹事長代理は日刊紙コンパスに対し「総選挙の勝者(国会第1党のPDIP)が大統領に意見を伝えるのは自然なことだ」と話し、同党幹部が長官人事に介入したことを示唆した。
 ブディ氏は13年6月の資産報告で226億ルピアと2万4千ドルの資産を報告した。08年の180億ルピアから5年で46億ルピア増えていた。英字紙ジャカルタポストは警察官の手取り月給が高官級でも1800万ルピアに満たないと伝えている。
 週刊誌テンポは10年、PPATKの資料を基に、警察官僚の不正蓄財疑惑を報道。取り上げられた高官21人にブディ氏も含まれていた。
 国家警察委員会はこれまで、高官9人を次期警察長官候補として選考を進め、このうち年内に定年を迎える4人を除外、ブディ氏を含む5人を候補者として公表していた。アンディ内閣官房長官によると、国家警察委員会はジョコウィ大統領に対し、9日午前に5人の名簿を提出した。
 大統領は近く国会に人事案を提出する考え。大統領は、長官指名に際して複数候補の人事案を国会に提出することができる。これまで複数候補の人事案提出が多かったが、ユドヨノ前大統領が指名したスタルマン長官に続き、2代続けて単独候補の人事案が提出される見込みとなった。
 スタルマン現長官の任期は10月まで。警察長官の任免は警察法で大統領の権限と規定されているが、テジョ政治・法務・治安調整相によると、スタルマン長官の退任を早めるかどうかは現時点で未定。(田村隼哉)

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