捜索救難庁隊員に指導 日本の自己救助法紹介 水難学会の「浮いて待て」
水に落ちた際に浮いて救助を待つ「ういてまて」(着衣泳)の普及に取り組む水難学会(会長・斎藤秀俊長岡技術科学大副学長)は30日、バンテン州南タンゲランのジャカルタ日本人学校(JJS)プールで、インドネシアでは初めての指導員養成講習会を開いた。国家捜索救難庁の救助隊員ら約40人が参加した。今後、隊員がインドネシア各地に広めて行くことが期待されている。
靴の浮力を生かせば、浮きやすい上半身と沈みやすい下半身の釣り合いがとれることに着目した同学会は、仰向けの姿勢で顔面を水から出し、呼吸を維持する自己救助法を「ういてまて」と名付け、2003年ごろから日本各地で紹介している。現在は年7万〜8万人が講習を受けており、この方法で東日本大震災の津波から助かった子どももいるという。スリランカとタイでも指導員を養成した。
この日の講習会ではランニングシューズとTシャツでプールに入った隊員を、斎藤会長ら学会の指導員10人が指導。最初は補助役に身体を支えられながら浮いていた隊員も、コツをつかんで1人で浮かべるようになっていった。事故現場を想定し、さらに浮きやすくするためのペットボトルを投げ入れたり、緊急通報の手順も実演した。
講習会に先立つ29日には、水難学会が「ういてまて」の仕組みや方法を説明したほか、両国の水難や救助活動をとりまく状況を報告し合った。東日本大震災を経験した学会指導員の安倍淳さん(55)は、宮城県東松島市で経営していた潜水土木会社の事務所が津波で破壊され、床材の一部に乗った状態で川を約7キロにわたって溯上(そじょう)した経験を講演した。
斎藤会長によると、救助隊到着時には、水中に沈んでしまっている犠牲者が多く、救助する側の技術とは別に「救助される側」にも技術が必要と感じたことが普及活動のきっかけという。斎藤会長は「人が実践しているのを見れば、自分もしてみようという人が出てくる。自然発生的に広がれば、溺死者も減っていくだろう」と期待した。
捜索救難庁でインストラクターを務めるチャンドラ・クリスナさん(28)は「小中学生でも簡単にできる。捜索救難庁が学校で開いている授業に取り入れたい」と話した。1日には、JJS4年生を対象に講習会を開く。 (道下健弘 11面に関連)