「浮いて待て」紹介 イで初のワークショップ 日本の水難学会
水に落ちた際、靴や服を身につけたまま水面に浮いて救助を待つ方法「ういてまて」(着衣泳)をインドネシアで広め、水難対策に役立ててもらおうと、同手法の普及啓発に取り組む水難学会の斎藤秀俊会長(長岡技術科大学副学長)らが来イし、29と30の両日、国家捜索救難庁の救助隊員らに方法を紹介する。同国で講習会を開くのは初めて。
「ういてまて」では、靴のクッション素材や衣類と身体の間にたまった空気などの浮力を生かし、水面に顔を出して救助を待ち続ける。2000年以降、同学会が認定する指導員を通じ、日本の小学校などで広まっている。12年にはスリランカで、13年にはタイでも紹介。簡単に実践できることや、水に人が浮かぶという現象自体が興味を持って受け止められやすく、両国でも「ういてまて」は日本語のまま取り入れられ、認知も高まっている。
インドネシアでは、ジャカルタ日本人学校(JJS、バンテン州南タンゲラン)を会場に、ワークショップやプールでの指導員養成講習会を開く。救助隊員約30人のほか、JJSや地元の教員らも参加する。インドネシア側の参加者を通じて今後、草の根的に普及活動が広まることが期待される。
来月1日にはJJS小学部4年全員約150人を対象にした講習会も計画している。
海上保安庁から運輸省海運総局に派遣されている国際協力機構(JICA)専門家で、同学会会員でもある西分竜二氏によると、インドネシアでは水難事故に関する統計データがない上、家族が水の事故で亡くなるのは「恥ずかしい」との考えがあり、問題が表面化しにくい環境にある。
それでも毎年かなりの犠牲者が出ているとみられ、斎藤氏は「どんな人でも数分で浮けるようになる。(周知が進み)子どもたちがいつの間にか、命を守れるようになっていた、というようになればうれしい」と話している。(道下健弘、写真も)