閣僚候補に汚職疑惑 新内閣発表ずれ込む KPK調査報告
ジョコウィ新内閣の発表が遅れている。ジョコウィ大統領は就任直前、閣僚候補者名簿を汚職撲滅委員会(KPK)に提出し、汚職関与の疑いに関する調査を依頼した。KPKは43人中数人に疑いがあると報告、闘争民主党(PDIP)など連立与党が推す有力候補らに赤信号がともり、最後の調整が難航している。
ジョコウィ氏は先週、KPKが汚職の疑いの有無を、金融取引報告分析センター(PPATK)が候補とその家族の口座で不審な動きがないかを調べるよう要請した。KPKとPPATKが43候補中いくつかの候補に「赤信号」を出したとされたことが波紋を広げた。
KPKのズルカルナイン副委員長は21日、「候補の合否判断ではなく、あくまで疑惑の有無に関する調査結果を提示した」とした上で「汚職事件の容疑者になる可能性があり、候補として危険性の高い人物に赤を付け、あまり適切ではない人物には黄色を付けた」と説明した。汚職の疑いが指摘されたのは政党候補で、専門家候補は問題ないとした。
21日付日刊紙コランテンポによると、ムハイミン民族覚醒党(PKB)党首(前労働移住相)は人間開発・社会文化相の候補だったが、労働移住省職員の汚職事件公判での起訴状で、20億ルピアを収賄したとされたことが問題視。ムハイミン氏は21日ツイッターで「大臣よりも党首の職務に集中するほうがいい」と大臣職をあきらめる考えを示した。
リニ・スマルノ元産業貿易相は中銀の流動性供給に絡む汚職事件で聴取を受けたことが問題視された。また、内務相候補のアグスティン・テラス・ナラン中部カリマンタン州知事が企業からの献金、海事相候補の国営港湾ペリンド2のリチャード・リノ社長が同社での汚職疑惑で聴取を受けたことをとがめられた。
非政府組織(NGO)の汚職監視団(ICW)のエマルソン・ユント氏は「警告を受けた人物は外すべきだ」と訴え、汚職疑惑のある人物の入閣をけん制した。
政権移行チームは当初、ジョコウィ大統領が就任する20日に閣僚を発表するとしていた。ジョコウィ氏は21日、「昨夜、全員を呼び出し(話し合いに)午前3時半までかかった」とし、「まだ対立があるが、国民に近い内閣を示せると考えている」と話した。
対立の背景は新政権内の主導権争い。政権移行チーム発足から、閣僚選びをめぐってジョコウィ氏と政党党首らの綱引きが始まったという。同チーム代表にPDIPのメガワティ党首側近のリニ氏が座り、水面下で駆け引きが激化。ジョコウィ氏周辺が「専門家内閣」「政党党首と閣僚の兼任は認めない」とけん制すると、ムハイミン氏やメガワティ氏長女のプアン氏ら連合政党の幹部が反発した一幕もあった。(吉田拓史)