プラボウォ派切り崩し ジョコウィ氏 閣僚人事、最後の交渉
ジョコウィ次期大統領は20日の就任を目前に控え、入閣者を特定する最後の交渉に入った。ジョコウィ派4党、プラボウォ派5党、中立1党の間でさまざまな思惑が絡み合い、与野党の構成は流動的。国会の正副議長ポストを独占したプラボウォ派を切り崩し、野党勢力も取り込むことで内閣の基盤強化を図る構えだ。
ジョコウィ氏周辺では、経済調整相候補にスリ・ムルヤニ世銀専務理事が浮上している。財務相在任時に改革を進め、バクリー・ゴルカル党党首との軋轢(あつれき)などでユドヨノ政権を去ったスリ氏を再登板させれば、内外に改革のシグナルを発することになる。全34閣僚のうち18人が専門家出身、16人が政党出身者としたが、経済閣僚に関しては専門家で占める方針だ。
商業相をめぐっては、カラ次期副大統領がルトフィ現商業相(前駐日大使)を推し、メガワティ闘争民主党(PDIP)党首がリニ・スマルノ元産業貿易相を推す「綱引き」と日刊紙コランテンポは報じた。スカルノ家系に近いリニ氏は経済調整相、財務相の候補からは外れたとみられる。各閣僚候補には専門家、政党関係者、退役軍人が並ぶという。
ジョコウィ氏は15日、33閣僚が確定したと話したが、将来的に開発統一党(PPP)、ゴルカル党、民主党の3党などに「椅子を用意している」と合流の可能性を示唆している。
10党が乱立する国会の議席はジョコウィ派37%、中立11%、プラボウォ派52%の構成。残り4日で、大統領の持つ閣僚人事権を最大限に使い最後の交渉を進める。滑り込み候補の政党としては、ジョコウィ氏が突きつける厳しい条件は飲みたくないが、周りに先を越されれば機会がなくなるジレンマを抱える。
すでに議会の正副議長ポストを分け合ったプラボウォ派は、国会委員会ポストを割譲し引き留めを図るが、閣僚ポストほどの効果はない。ジョコウィ氏はバクリー氏をはじめ、プラボウォ派の主要メンバーと会談し、入閣者を最終決定する。
プラボウォ派は地方首長選の直接選挙を廃したり、スハルト時代の政治制度の復古を検討したりと既得権派の立場を鮮明にしている。ジョコウィ派が政官業にわたる縁故グループ「マフィア」の撲滅を目指していることと真正面からぶつかる。
ジョコウィ氏はメガワティ闘争民主党(PDIP)党首周辺ら連合政党の動きも押さえないといけない。鍵は強い世論の支持になる。そのため燃料補助金を廃し、財源の一部を貧困層1億人(世銀換算)に保健医療、奨学金を提供し、底辺から新政権に対する支持を獲得することで基盤強化に結び付けたい考えだ。(吉田拓史)