シーワールド閉鎖 経営権紛争が激化 アンチョール対リッポー
レジャースポットとして年間100万人以上が訪れる北ジャカルタ・アンチョール公園内の水族館「シーワールド」の経営権をめぐり、州営プンバングナン・ジャヤ・アンチョール公社と財閥リッポー・グループのシーワールド・インドネシアの対立が激化している。同館は先月27日に閉鎖し、チケットの払い戻しに応じている。
北ジャカルタのアンチョール公園を管理・運営するアンチョールと、シーワールドを経営するシーワールド・インドネシアは今年6月末付で、1992年に調印したBOT(建設・運営・譲渡)契約を終了した。
内容は、アンチョールがシーワールドに土地を貸与する見返りに収益の6%を徴収するもの。20年の契約満期に伴ってアンチョールが経営権を引き継ぐ構えだったが、シーワールドは6月の契約期間を過ぎても経営権の継続を主張し、さらに20年の延長を要求。猶予期間の3カ月を過ぎても主張を変えないため、アンチョールは北ジャカルタ地裁とインドネシア仲裁機関(BANI)に訴え、同館を閉鎖した。
■1日7000万ルピア
アンチョールのリム・ゾフィト・シマヌンカリット弁護士は1日、記者会見でシーワールドの閉鎖に至った経緯を説明し、「来館を楽しみにしていた人に対して申し訳ない」と謝罪した。
シーワールドの関係者によると、先月27日の閉鎖から6日間で61人が払い戻しを要求。同館は維持に1日当たり6千万〜7千万ルピアのコストがかかり、閉鎖が長期化するほど損失が拡大する。
また、現在は一部の飼育員の出入りが許されているが、閉鎖の影響で通常の運営ができないため、魚や動物のストレスが増加する可能性があるという。リム弁護士は「このまま閉鎖する場合は魚を海へ帰さなければいけない」と話している。
観光創造経済省のタズビル国内観光振興総局長は「国内外に人気の観光施設が閉鎖したことで多くの人の失望を招いた」と両社を批判し、迅速に解決するよう求めた。アホック副知事は「契約が切れたら再契約をするのが当然だ。自動延長はあり得ない」とアンチョール開発公社が経営を引き継ぐよう話している。
シーワールドには30種以上の海水魚が約3万匹飼育され、メーン水槽は東南アジアで2番目の大きさを持つ。サンゴ礁やジュゴンなど絶滅危惧種に指定されている生物もおり、自然保護を訴えたり、研究機関としても活用されたりしていた。(西村百合恵)