「美空ダンサー」初公演 舞踊家の蓮田さんが稽古 ビヌス大の日本舞踊会
日本人舞踊家の蓮田愛さん(二九、愛称・愛チンタ)が指導してきたビナ・ヌサンタラ大(ビヌス大)の舞踊サークル「創舞研究会・美空ダンサー」が三日、西ジャカルタの同大アングレックキャンパスで初公演を開いた。蓮田さんは二〇〇八年から私費でインドネシア各地を周り、学生たちに舞踊を指導してきた。
蓮田さんは今年一月にインドネシア各地を回った際にビヌス大の学生を直接指導し、その後はスカイプなどを通じてアドバイスをしてきた。また週一回、蓮田さんの弟子でコーチの資格を持つイインさんも指導。今回、学生たちは「美空ダンサー」を結成し、初公演を実施した。
浴衣を着た美空ダンサーの十二人は、蓮田さんが日本で買い付けてきた浴衣を身に付けて登場。十二人が口を一文字に結び、坂本冬美の「アジアの海賊」に合わせて、大胆な動きの踊りを披露。キロロの「未来へ」や東方神起の「どうして君を好きになってしまったんだろう」、大塚愛の「プラネタリウム」など、生徒が選んだ楽曲に合わせて、手首を器用に動かして扇を回し、首や手を傾け、腰を落とし、日本舞踊のしなやかな動きを披露した。
蓮田さんは、出身地の茨城県水戸市が三月の東日本大震災で被災したことを話し、ビヌス大の学生たちが募金活動を行ったことについて謝意を述べ、「心の友」に合わせて舞踊を舞った。
今回、蓮田さんは美空ダンサーを稽古する指導者のテストを実施。ジャカルタ初の日本舞踊の指導者として三人を選んだ。指導者は、蓮田さんがいないときにも他の生徒らに日本舞踊を教える。美空ダンサーは今後、各地のイベントなどで日本舞踊を披露する予定という。
■すべて私費で巡回
日本各地で日本舞踊を教えている蓮田さんは、十一月二十日から十二月四日までインドネシア各地を訪問し、日本舞踊に関心のある大学生・高校生千人以上に直接指導を行った。
蓮田さんの大学巡回は今回で七回目。二〇〇八年に、出身の園田学園女子大学の学術提携校である西スマトラ州パダンのブンハッタ大学で日本舞踊の講習を開いたことをきっかけに、パダン市内の高校生や、北スマトラ州メダン、ジョクジャカルタ特別州、西ジャワ州バンドン、ジャカルタの学生たちに日本舞踊を教えてきた。ブンハッタ大の舞踊サークル「桜ダンサー」には、現在百人を超える学生が在籍し、蓮田さんや有資格者十一人が教えているという。
蓮田さんの巡回は全て私費。日本各地に稽古場を持ち、新舞踊・桐流・創舞研究会代表としての仕事がある中、時間を見つけてインドネシアでの指導を行う。着物を身に付けたままの移動など、苦労は多いが「学生たちの熱意や真剣なまなざし、笑顔を見ると、また来たいと思う」と語る。
もともとは「正しい日本舞踊を知ってもらいたい」という思いから始めたが、「日本舞踊を通じて体得した礼儀作法などの日本文化を生かし、立派な社会人になってほしい。日本との関わりを持ち続けてほしい」と期待を語った。