思い出の一句 入選 「バリの砂 古代の生き物 まじってる」 元JJSの4年生 海外日系文芸祭で
「バリの砂 古代の生き物 まじってる」―。ジャカルタ日本人学校(JJS)に通っていた小学4年生の上坪佑乃介君が詠んだ俳句がこのほど、第8回海外日系文芸祭(みなとみらい文芸祭)で入選を果たした。家族旅行で訪れたバリの海岸で、インドネシアに住んだ最後の思い出として作った一句だ。JJSから転校し、現在は香港日本人学校小学部大埔(タイポ)校に在籍している佑乃介君は「次は、高層ビルや船が行き交う湾の情景を詠んでみたい」と意気込み、来年の再挑戦へ向け思いを巡らせている。(岡坂泰寛、写真も)
同文芸祭は、海外日系新聞放送協会と海外日系人協会などが主催の俳句と短歌のコンテスト。海外日系社会と日本との交流深化を目的に、2004年から開催されている。今年は、14カ国から昨年を293点上回る1562点が寄せられた。
佑乃介君がジャカルタへ引っ越してきたのは2009年。全日本空輸(ANA)から「東アジア・ASEAN(東南アジア諸国連合)経済研究センター」(ERIA)に派遣された父・雄之さんの仕事の都合で、東京の小学校からJJSに転校した。ジャカルタが大好きだった佑乃介君。父の転勤でジャカルタを離れることが決まった後、新聞で俳句の募集を偶然見つけ、「最後の思い出に」と取り組むことを決めた。
祖母の中納祐子さんは佑乃介君が小さいころによく俳句を詠んでくれていた。自分で作ることは初挑戦だが、家族にとって俳句は身近なものだったという。
5月、バリ島ヌサドゥアのホテル・グランド・ハイアット。昼前に母・摂さんと妹・玉季さん(小学1年生)と一緒に海岸で過ごしていたとき、佑乃介君は砂の中に小さな化石やピンク色の珊瑚が混じっているのを見つけた。10分間ほど考え、スラスラと5・7・5で口に出た俳句が、入選した一句だった。
締め切りが間近に迫っており、ジャカルタから応募用紙で送ったのでは間に合わないため、摂さんが三重に住む祖母に代わり送ってもらうよう頼むと、「孫のためなら」とすぐに送付してくれた。
昆虫が大好きな佑乃介君。「香港は季節感があって、とても楽しい」。住んでいるアパートの窓からは、香港島の夜景とマカオへ向かう船が行き交う湾が一望できる。家族も佑乃介君が次にどんな俳句を詠むのか楽しみにしている。