間接選挙導入案で攻防 野党連合が議会工作 首長選改正大詰め
プラボウォ氏が主導する野党「メラプティ連合」が州県知事や市長ポストの掌握を目指し、地方首長選挙法改正による間接選挙導入を目指している。国会議席数で多数派を形成しており、25日の本会議で可決させる構えだ。これに対しジョコウィ次期大統領側は、大統領や首長の直接選挙はスハルト独裁政権崩壊以降の民主化の根幹にあたり、10月1日発足の新国会が継続審議すべきだと反発している。
間接選挙案は、プラボウォ陣営が大統領選の憲法裁審査で敗訴した後に浮上した。ゴルカル党のイドルス・マルハム幹事長は地元メディアに対し、プラボウォ氏の旧選対本部でメラプティ連合に参加する政党代表者と会合を開き、今後の議会工作について協議したと説明。「大統領ポストは渡したが、州県知事、市長はわれわれが掌握する」ことで一致したという。同連合は国会をはじめ、西カリマンタン州を除くすべての州議会で多数派を形成する。
現行制度は、首長と地方議員を別々に有権者が直接選ぶ二元代表制。今回の議論では、首長の選出方法を定める地方首長選挙法を改正し、議会を掌握するプラボウォ氏のメラプティ連合に有利な選出方法への改変を狙っている。
間接選挙が実現すればメラプティ連合が首長選出を主導できるようになる。ジョコウィ氏包囲網の形成を視野に入れた動きといえ、次期政権発足後をにらんだ両勢力のせめぎ合いの様相を呈している。
連合側は、二元代表制のデメリットとして▽議員と首長の二つの選挙を実施することによる選挙費用の膨張▽ばらまきの助長▽選挙運動の激化による支持者間の衝突の激化―など「政治コストの増大」を挙げている。
一方、ジョコウィ所属政党・闘争民主党(PDIP)などは「民主化の後退」を理由に反対。間接選挙の場合、首長は議会に対して責任を負うため、首長が有権者の利益より政党の利益を優先するようになるとの指摘だ。首長と議会が相互にけん制し合う関係が弱まれば、地方レベルでもまん延する汚職をさらに助長する可能性もある。
国会公聴会で8日、意見陳述したインドネシア大学の法律専門家レフリー・ハルン氏は、賛成派が論拠とする現行制度の問題点に触れ、「選挙戦でのばらまきや対立激化は、法執行能力の問題であり、(選挙制度と結びつけるのは)非論理的だ」と述べた。
選挙の効率化や予算節減を目的に、内務省は今年に入り、各地の首長選の同時開催などを提案。与野党もこれに同意していたが、その後、内務省や政党の意見が二転三転した経緯がある。憲法裁は今年1月、2019年の次回選挙から大統領選と総選挙の同時開催を決定したが、首長選については国会での議論が必要と判断を保留していた。(道下健弘)