殺陣に初挑戦、60人が合宿 来春、日本公演も決定 劇団en塾新作練習
インドネシア人学生らによる日本語ミュージカル劇団「en塾(エンジュク)」は12月に開く本公演のミュージカル「時代検証アプリ192」の練習のため5日から7日までの3日間、西ジャワ州プンチャックのヴィラ「ペナ・ゲフィカ」で合宿を行った。来春日本での公演も決定し、団員は熱心に練習に励んだ。
合宿には約60人が参加し、美術部、衣装部、演技部に分かれて活動した。朝6時から夜11時まで3日間の共同生活は公演に向けた結束力を高める狙いもある。激しいアクションの練習で破れた衣装を繕う衣装部は「もっと縫い目を強くしたらどうか」「袖の長さが合わない」と準備を進めた。
演技部に対しては「声が出ていない。もっと練習しなさい」と同劇団を管轄するジャカルタ・コミュニケーション・クラブ(JCC)の甲斐切(かいきり)清子さんが指導した。演技する団員を見ながら、美術部は舞台装置のアイデアを練る。江戸時代の小道具は資料を見ながら作成した。全員が一体となって合宿は進む。
演目の「時代検証アプリ192」は、感情を持たないアプリ「コード192」が江戸時代に行き、人たちと触れあうことで感情が芽生えていくというストーリー。作品の見どころは約10人が演じる殺陣。作中で殺陣を使うのは初めての試みだ。団員らは慣れない刀を使った踊りやアクションを集中的に練習した。体力が必要なため時折疲れた表情を見せながらも、最後には全員の前で練習の成果を披露した。
甲斐切さんによると「短時間の練習でも違うものができあがる」という。「最初と演出が変わることは無駄ではない。みんなが良いものを作ろうという情熱を大事にしたい」と話す。
主役に起用されたのはジャカルタ国立大学(UNJ)日本語学科の2回生、アガスティア・ヌガラ・ヤノタマさん。日本の歴史や文化が好きでen塾に入団した。主役を希望したのは「人間になりたいと思う心の動きにひかれた」から。周りの人と過ごしていくうちに笑顔や愛情が生まれていく。微妙な心の動きを表現するのは難しいが「新しい役どころに挑戦したかった」という。
同劇団は4月に日本公演を開いたため、毎年10〜11月に行っている中央ジャカルタのジャカルタ芸術劇場での本公演を約2カ月延期した。オーディションで配役が決定したのは6月。短い準備期間で作品を仕上げなくてはいけない。 また来年春には、2回目となる日本公演の熊本・博多公演も決まった。合宿の1週間前にその知らせを聞いた団員らは練習に一層気合が入った。「新しいことにチャレンジすることが大切。そして長く継続することが重要」と甲斐切さんは話す。団員らが社会へ出たとき、en塾での経験を役立ててほしいという願いもある。 本公演は12月13、14日の両日開かれる。「今までのen塾の作品の中で一番すばらしいものにします」とアガスティアさんは意気込んでいる。(西村百合恵、写真も)
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