ビットコイン ホテル、海外送金…利用者増 「小売で購入可」発表で混乱 イ政府、中銀は警戒
ビットコイン・インドネシア社は5月、バリ島の地元企業や飲食店と提携した「ビットコインアイランド」計画を発表。すでにクタとウブド両地区のカフェやレストラン、5つ星ホテルでの支払い利用が可能になっているところがある。
地区全体に普及すれば、観光客誘致につながると、導入に意欲的なホテル経営者が増えているという。
インドネシアは世界有数の「海外出稼ぎ大国」で、毎年平均200万人が海外に出て働き稼いでいる。本国の家族への送金方法はさまざまだが、不正業者による横領などの問題が絶えず、比較的簡単、安い手数料、安全に送金できるビットコインが利用され始めている。
ただ、課題は多い。
ビットコイン・インドネシア社は3日、小規模スーパー「インドマレット」でビットコインの購入が可能になったと発表した。インドマレットの広報はじゃかるた新聞の取材に対し、販売は開始していないと否定。政府や中銀が規制を検討しており、社内で販売の慎重論が強いという。ほかの日用品・食品販売企業も導入には様子見の姿勢で、当局がどのような対応を取っていくのか注視している。
■ユーロ危機が背景
ビットコインが世界で普及した背景には、2010年に始まったユーロ危機が関係している。財政危機に陥った国では、通貨ユーロに対する信用不安からビットコインへの投機が活発化。相場は急上昇し、世界中の注目を集めた。
シンガポールをはじめとする東南アジアでも利用者が急増している。加入審査は一般の金融サービスより緩く、インドネシアでは、クレジットカードや銀行口座を保有しない若者を中心に利用が拡大している。
■サイバー攻撃の脅威
2月には日本の大手ビットコイン取引所のマウントゴックスが、サイバー攻撃を受け顧客から預かっていたビットコインの大半が消失。経営破綻に追い込まれ、多くの顧客が多額の損失を被った。
取引は個人情報が残らないため、麻薬などの不正取引やマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されるとの指摘も多い。ロシアや中国、タイなどでは政府が自国通貨との交換を禁止するなどの規制をかけている。
インドネシア中銀は「ビットコインや他の仮想通貨は、国内では合法的な通貨や決済手段ではない」としている。政府は使用やルピアとの交換を制限していないが、規制を検討しているとみられる。
ビットコイン 2009年から運用が開始されたインターネットで流通する仮想通貨。ルピアなど既存通貨と交換できるほか、ネットショッピングでの支払いや、世界中の利用者への送金が可能。クレジットカードなどを使わずに商品を売買できるため、手数料が安いのが特徴。価値が大幅に変動しないよう、プログラムで全体の埋蔵量が設定、流通量も調整されている。