推す中央、地方は反発 リスマ・スラバヤ市長の再出馬 闘争民主党 「革新市長」背景にねじれ
2015年6月投票スラバヤ市長選でのリスマ現市長の再出馬意向をめぐり、闘争民主党(PDIP)の中央執行部と東ジャワ州支部の姿勢がねじれている。几帳面な自治体運営を好むリスマ市政を、「革新市長」とたたえる世論を背景に中央は支持。これに対し、州支部は関係者の利害駆け引きが絡んだこれまでの経緯に不満をうっ積させている。「堅実なリスマ市政」と「地元の政治力学」はもはや水と油のようにはじき合い、融合は難しい状況だ。(吉田拓史)
ねじれの発端は、バンバン東ジャワ州副支部長が2日「(リスマ市長は)どうぞ他の党から出馬してください。後で負けることになる」と挑発したことだ。「もし党をやめたければ、(去る)門戸は開いている」
これにリスマ市長側は反発。リスマ氏の後援者マト・モフタル氏は「発言の撤回を求めたい。大統領選では応援演説担当で貢献したのに、党の支持を受けられないのは不自然だ」と話した。対立を静観できなかったハスト党副幹事長は、リスマ氏の実績を評価する声明を出した。党の市長候補はリスマ氏で変わりないと強調した。
バンバン氏は東ジャワの大物政治家。スラバヤ市長を2期務め、3選禁止のため、市開発計画課長だったリスマ氏を市長候補に担いで自身は副市長に甘んじた。実質的な「3選」狙いとみられたが、都市行政の専門家であるリスマ氏が独自路線に出て、両者の仲は決裂した。
バンバン氏は市政を振り返り「党支部、議会、副市長と連携をしなかった」と不満をあらわにした。昨年の東ジャワ州知事選の候補になるも落選、昨年11月、スラバヤ市長時代に7億2千万ルピアを脱税したとして容疑者に認定された。
部下のウィスヌ副市長(PDIPスラバヤ支部長)も売春街ドリー封鎖などの施策で市長に立ちはだかった。11年に他界したウィスヌ氏の実父は、国民協議会(MPR)副議長を務めた党の重要な古参政治家だった。
リスマ市政は知名度が高く、内外から好評価を受けた。今年も英団体が「革新的な活動」と評価、世界市長アワードの候補にも入った。ジョコウィ・ジャカルタ特別州知事、リドワン・カミル・バンドン市長らとともに、汚職疑惑だらけの地方首長のなかで成功した「革新市長」と、メディアが報道してきた。
東ジャワ州での党勢自体は上げ潮。今年は東ジャワ州全38県市のうち18県市で知事・市長の選挙が控えている。PDIPは4月の総選挙で、同州内ではトップの民族覚醒党(PKB)とは僅差の得票率を獲得し、16県市では最高だった。この勢いを背に地方首長職を増やしたいと考えるのは、中央の政治家として当然の判断といえる。