新委員長にサマッド氏 新体制で政権再浮揚へ  汚職撲滅委

 国会第三委員会(法律・地方自治・人権担当)は二日、大型汚職事件を追及する独立捜査機関・汚職撲滅委員会(KPK)の委員長・副委員長の五人を投票で選出した。新委員長は汚職を追及する市民活動を行ってきた弁護士のアブラハム・サマッド氏に決定。任期は二〇一五年まで。ユドヨノ大統領が任命し、正式に就任する。汚職の巣くつとされる既存の捜査機関から独立する形で設置されたKPKは、これまで手付かずだった政府高官や地方首長の汚職に切り込み、ユドヨノ政権の最大の成果の一つとなったが、近年は捜査機関や政治家、実業家の巻き返しを受け、独立性を問う声も上がった。支持率が低下傾向にあるユドヨノ大統領は新体制のKPKとともに汚職撲滅への強い姿勢を再度打ち出し、政権の再浮揚を図ることになる。

 国会第三委は今週初めから、法務人権省のKPK幹部候補審査委員会が八月に提出した候補者八人への面談を実施。二日に八人から四人へ絞り込む投票を行った後、現委員長のブシロ・ムコダス氏を加えた五人の中から委員長を選出する投票を実施した。
 委員長選挙では五十五委員の投票のうち、サマッド氏が四十三票を獲得。ブシロ氏が五票で二位になり、著名弁護士で前回の委員長選出選挙で決選投票まで進んだバンバン・ウィジョヤント氏が四票で三位。最高検幹部のズルカルナイン氏は三票、国家警察委員会のアドナン・パンドゥプラジャ氏は一票だった。二位以下の四人が副委員長に就任する。
 有力候補とみられていた金融取引・報告分析センター(PPATK)のユヌス・フセイン前所長、KPK顧問・倫理委員会委員長のアブドゥラ・ヘハマフア氏は一回目の投票で落選した。
 サマッド氏は、国会第三委との面談では、通報者の保護を徹底することが汚職撲滅につながると強調。選出後は「すべての事件に取り組めば、エネルギーを使い果たしてしまうだろう」と述べ、大規模な汚職事件を優先的に追及していく方針を示した。
 また最近、KPKに対する政治的干渉が激化していることを問題視、「汚職捜査は政治から切り離して取り組まなければならない」と述べ、干渉を受けた場合、辞任して拒否する態度を示すと言明した。

■国会、主導権誇示
 KPK幹部候補審査委は経歴などから候補者八人にランクを付け、四人を新幹部にふさわしいと国会に推薦。市民団体や現職のKPK幹部も審査委の評価に基づいて選出すべきと訴えていたが、国会側は評価を重視せず、順当に選ばれたのはバンバン氏だけだった。
 国会第三委は書類の不備などを理由に再三にわたってKPK幹部の選考過程を延期。二日の選挙でブシロ現委員長に票が入ると第三委委員が野次を飛ばすなどの「嫌がらせ」を行い、KPK幹部選出は国会が主導権を握るとの姿勢を誇示してきた。
 国会側は今年一月に政治家十九人を一斉に逮捕するなど、汚職追及の手を緩めないKPKに反発、KPKの弱体化を模索しているとされている。

◇アブラハム・サマッド氏
 南スラウェシ州マカッサル生まれ、四五歳。弁護士。マカッサルのハサヌディン大で法学の学士、修士、博士号を取得。南スラウェシで非政府組織「反汚職委員会(ACC)」を共同で立ち上げた。しばしばイスラム強硬派を擁護する発言をしている。

◇汚職撲滅委員会(KPK)
 大型汚職事件を捜査、訴追する独立機関として、二〇〇四年一月、メガワティ政権下で発足した。捜査だけでなく逮捕や起訴ができるなど警察や最高検を上回る強大な権限が付与され、大型汚職事件を次々に摘発。汚職の慣習がはびこったスハルト政権崩壊後のレフォルマシ(改革)の成果として、内外の高い評価を獲得した。〇九年、警察が収賄未遂容疑で副委員長二人を逮捕するなど、近年は警察や検察、国会による弱体化の動きも目立っている。


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