みそを現地生産 宮坂醸造 国内の日本食需要見込み ますやグループと組み
「神州一味噌」で知られるみそ製造大手、宮坂醸造(本社・東京)がインドネシアに進出し、来年、みその現地生産を開始する。350年の伝統を持つ宮坂醸造は、インドネシアの内需を見込み、従来の製品のほか、インドネシア人の味覚に合ったみそも生産する。日本で国内市場の縮小が進む中、日本食市場が急拡大する東南アジアの他国への輸出も視野に入れ、10年後には海外の売上比率を現在の約1割から5割に引き上げる方針だ。(堀田実希)
宮坂醸造はこれまで海外では中国で生産と販売、米国で販売を手掛けており、インドネシアは3カ国目。
今年5月にインドネシアの日本食材卸売ますやグループ(本社・ジャカルタ)と合弁会社「宮坂インドネシア」社を設立しており、来年1月に西ジャワ州ブカシのみそ醸造工場で生産を開始する。目標生産量は5年以内に年千トン。現在インドネシアでも流通している「み子ちゃんみそ」とインドネシア向けに新しく開発したみその業務用から生産を始める。
生産開始と並行して、国際的な衛生基準であるHACCP(危害分析重要管理点)に基づいた認証と、イスラムに沿った食材であることを示すハラル認証の取得を目指す。現在、インドネシアに輸入されているみそは発酵を抑えるためにアルコールを使ったもののみ。低温保存など、アルコールを使わず発酵を抑える方法を採用する。ハラル認証を取得し、インドネシア人を主なターゲットとするレストラン・チェーンなどへの販路拡大を狙う。
宮坂インドネシア社の町田卓也社長は、インドネシア進出について、世界第4位の人口を抱え、日本食レストランの数が5年で3倍になるなど、内需の魅力のほかに、宮坂醸造とインドネシアの関係を挙げた。
宮坂醸造の前会長の宮坂順三氏は、戦時中に日本軍の食料班としてジャワ島に滞在し、みそを製造したほか、約30年前には地元メーカーの要望に応え、宮坂正昭相談役がみその作り方を伝えに来たこともあったという。
町田社長によると、シンガポールでは健康食ブームを背景に日本食レストランに注目が集まり、現在は一般家庭の食卓にみそ汁が並ぶほど日本食が身近な存在になっているという。インドネシアでも近い将来、同様の現象が起きると推測している。
ますやグループの辻隆行ゼネラルマネジャーは、インドネシアには、大豆を発酵させて作った「タウチョ」と呼ばれる調味料があることから、日本のみそも受け入れられる素地があるとみている。約3万店のスーパーなどに商品を卸している同社のマーケティングノウハウを生かし、インドネシア人の舌に合ったみそを開発し、ローカライズした日本食普及に力を注ぐ方針。