「アジア有数の貿易都市に」 町づくりを熱弁 リスマ・スラバヤ市長

 地方首長の多くが汚職で立件される中、第2の都市スラバヤで気を吐く市長がいる。トリ・リスマハリニ(通称リスマ)氏(52)だ。2010年に就任後、政治的圧力をはねのけて町づくりを進め、全国区に名を上げたリスマ氏に市内で話を聞いた。

▽町づくりのコンセプトは。
 スラバヤを人々の家にするため、住民が求める設備・制度を整備してきた。例えば、余暇、医療、学業だ。スラバヤでは幼稚園から高校まで無料で学べる。子どもが学業を放棄せざるを得ない家庭には奨学金を出している。なかには学士、修士まで取得できるよう支援している人もいる。

▽どうして公園造りに力を入れているのか。
 これまで住民は、余暇にどこかに出かけると必ず金を払わねばならなかった。都市には、公園のようにどんな所得の人でもお金を払わずに会える場所が必要。しかも、緑地は大気をきれいにする。
▽スラバヤの中心部を東西に貫く高速道路計画を止めた。
 高速道路に執着していない。作ることには賛成だが、市の端を沿うようにするべきだ。
 すでに公共交通の計画がある。市内には路面電車「スロトレム」をつくる。東西をモノレールか高架鉄道でつなぎたい。なぜなら街には歴史の遺産、伝統があり、高架にしなければ取り壊すことになる。南北線の路面電車は国鉄と協力する。東西線のモノレール・高架鉄道もそろそろ入札に入りたい。これらの線を交わらせ、駅と駅のつながりを高めたい。パークアンドライド(乗用車を郊外の駅に駐車し、電車などで都心に向かうシステム)も導入したい。電車が行かない地域、住宅街にはミニバスを用意したい。

   シンガポールに匹敵

▽乗用車の利用者が増えて、渋滞が起き始めている。
 だからこそ、公共交通機関が重要だ。パークアンドライドで駅に駐車するようにし、公共交通機関で向かうようにする。(スラバヤの西)モジョクルトの工業地帯からのトラックが市内に入り渋滞になる。国家予算でモジョクルト高速道を建設している。この高速道は「新しい港湾」方面に向かう。新港湾さえできれば、市内を通らなくて済むようになり、交通が順調になる。

▽5年後、10年後スラバヤはどうなるか。
 アジア有数の貿易都市にしたい。将来的にはシンガポールに匹敵する都市になれると思う。欧州、米国からくる商船はシンガポールに停留する。豪州、インドネシアに向かうものもすべてシンガポールに停まる。新港湾ができれば、直接商船が来るようになり、スラバヤの位置は戦略的だ。

▽大臣や州知事などへの意欲はあるか。
 私はスラバヤにとどまりたい。
 ドリー撤去問題も質問したが、直接の回答は得られなかった。(聞き手、吉田拓史、写真も)

 【プロフィル】 トリ・リスマハリニ、東ジャワ州クディリ出身。52歳。スラバヤ工科大学で学士(建築学)、修士(都市計画)を取得。公園清掃局長時、闘争民主党(PDIP)から市長選に出馬。副市長候補は3選を禁じられた現職バンバン市長だったが、得票率38・53%で当選。任期は2010年9月〜2015年9月。

新世代市長の手腕
 ジョコウィ氏と同じ新世代首長。スラバヤ市職員出身だが、町づくりの構想力と実行力は注目されている。
 渋滞が加速するスラバヤ。松井和久JACインドネシア・シニアアソシエイトは本紙コラム(昨年9月24日)で二輪・四輪の増加と公共交通機関の退化に懸念を示した。
 リスマ氏は高速道路計画をストップさせたが、南北線の路面電車と東西線のモノレール「ボヨレール」の整備で対応する考え。また「新港湾」計画への熱意を見せるが、この計画はまだ調査研究の段階のようだ。
 リスマ氏が公園清掃局長時代に手がけたブンクル公園は2013年12月国連ハビタットからアジア都市景観賞を授与された。地方政府内には非効率的な部分も多いため、ジョコウイ氏同様、現場に出向く手法が評価されているのかもしれない。リスマ市長も局長時代は毎週末、公園を自分で整備していた逸話がある。
 市職員出身だが、バンバン前副市長、ウィスヌ現副市長らの「政党人」とともに仕事を進められる。先月にはウィスヌ副市長らの反対を受けながら東南アジア最大級の売春街ドリーの閉鎖を決行した。

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