家賃自動払いに困惑 首都政府は「滞納拡大対策」 低所得者向け団地住民
低所得者向けの州営賃貸集合住宅(ルスナワ)で膨張する家賃滞納問題に対処するため、ジャカルタ特別州が口座からの自動引き落とし方法を進めていることに対し、住民から不安と反発の声が上がっている。低所得者の支援策が裏目に出ているが、州は銀行による家賃一括管理システムを押し進める方針だ。
日刊紙コランテンポによると、州内3区分に所在する集合団地管理者組織による家賃未回収金は昨年末時点で計139億3千万ルピア(約1億2500万円)に達している。
また電気料、水道料の請求管理もずさんになっている。現在は、入居者は家賃・光熱費を管理者に直接支払っている。未請求額は170億6700万ルピアに上っている。
州政府は管理を一括化するため、州営DKI銀行と協力し、入居者に同銀での口座開設を義務づけ、家賃などを定期的に自動引き落としで回収していく方針。既にポンドックバンブー(北ジャカルタ)、プログバン(東ジャカルタ)の両集合住宅の入居者に適用している。
導入が始まったピヌスエロック集合住宅(同)の入居者は困惑を隠せない。31歳の女性は、手持ち金が少なく口座開設すらできないと嘆く。61歳の男性は「集合住宅に常駐する管理者に支払えば十分だ」と主張し、遠くにあるDKI銀のATMに行くのは面倒だと批判する。
州担当者は「集合住宅の悪質な滞納者を撲滅することが目的だ」と前面に押し出す。東ジャカルタで家賃滞納が最も深刻なのはティパルチャクン集合住宅で、入居者341世帯による滞納は計30億ルピアに上る。5年間も支払わず、滞納額は380万ルピアに達している者もいる。
ヨナサン建物住宅局長は、納金する意思がなく居座っている者、滞納のまま夜逃げし、再び別の集合住宅に入居する「マフィア」が後を絶たないと指摘する。また入居仲介者や管理者との支払いトラブルも頻発しているという。
第3地区の集合住宅管理者組織によると、滞納が目立つのは月20万〜50万ルピアの物件を賃貸している世帯。入居者の中には、州に家賃減免申請をしていたり、失業者もいたりして、一様に強制徴収することは困難という。