新大統領にジョコウィ氏 速報、5ポイント差
大統領選挙は9日投開票され、多数の調査機関が速報で、ジョコ・ウィドド・ジャカルタ特別州知事(53)の勝利を伝えた。プラボウォ・スビアント元陸軍戦略予備軍司令官(62)との差は5ポイントほどの小差だった。ただ、プラボウォ氏も勝利を主張している。
ジョコウィ氏は9日午後2時半頃に記者会見を開き「開票速報の結果によると、ジョコウィ―カラ組が勝った」と勝利宣言した。その後プロクラマシ公園では「この勝利はジョコウィ―カラのものではなく、政党連合のものでもなく、選挙対策本部のものでもなく、民衆のものだ」と話した。カラ副大統領候補も会見で「皆でこの国の未来を話し合おう」と話した。
日刊紙コンパス、CSIS、インドバロメーター、SMRCなど、多数の調査会社の開票速報が、ジョコウィ組の4〜6ポイント差の勝利を伝えた。
ただプラボウォ陣営は3調査機関が自派の勝利を伝えたと主張し勝利宣言をした。総選挙委員会(KPU)は7月22日に選挙結果を正式に確定する。
▼大差から接戦に
「ジョコウィ旋風」は2012年6〜9月のジャカルタ特別州知事選から、14年4月の総選挙前まで続いた。だが、総選挙で闘争民主党(PDIP)が小差の勝利に甘んじてから、プラボウォ氏の猛追が始まった。
大統領選のキャンペーンが始まると、ジョコウィ氏は政策を丁寧に説明する戦術で、第一声はパプアだった。地方を中心にジャワをきめ細かく歩いた。
一方、プラボウォ氏は一騎打ちが決まるとカードを全て切った。ジョコウィ氏が小さな連合にこだわるのを横目に6党巨大連合を築き、地上波テレビ局の12局中5局を陣営に加えた。
しかも、ジャワ島各地のキアイ(イスラム知識人)の票が焦点になる中で、ジョコウィ氏に対するタブロイド紙、ソーシャルメディア、携帯SMSによる「華人」「非ムスリムのキリスト教徒」など誹謗中傷が表面化。ジョコウィ陣営は防戦に追われた。
メディア発信で劣勢に立たされたジョコウィ陣営は、草の根組織の戸別訪問に資源を投下。土壇場でプラボウォ氏が先行した「ばらまき公約」も解禁して厳しい選挙戦が続いた。
新旧の二時代の対決は、1998年のスハルト政権崩壊後のレフォルマシ(改革)を代表するジョコウィ氏に旗が上がった。だが、僅差はスハルト勢力の大きさも物語っている。
▼多数派工作が焦点
ジョコウィ氏は今後、議会多数派の形成を目指す可能性が大きい。ジョコウィ陣営は国会議席の37%で、法案通過に必要な過半数に届かない。かぎになるのが国会議席16.5%の第2党ゴルカル党だ。ゴルカル党を加えると、ジョコウィ陣営は議席の53.5%になる。
ゴルカル党は過去2回の大統領選後、大統領選で争った相手と連立している。仕掛けは大統領就任式の10月20日前に開かれるゴルカル党首選だ。今回も年内に党首選(2014年〜2019年任期)を予定している。カラ氏は、04年に党を割ってユドヨノ氏と出馬し、副大統領に当選後、ゴルカル党首になった前歴がある。同様の経緯をたどる可能性もある。
大統領選の討論で両陣営から重要な指摘が出たのを今後に生かさないといけない。プラボウォ氏は5日の討論会で「われわれは票の売買やもろもろの正しくない行いがあると知っている。この国の民主主義が抱える現象だ」と語った。さらにカラ氏も先月9日の討論会で「しっかりとした警察、検察がなければ、法の支配を実現できない」「きれいで効果的な政府がこの国の国民に仕えなければいけない」と強調した。(吉田拓史)