中国向けLNG価格引き上げ 2倍以上も、国内価格には届かず 西パプア州タングー
ジェロ・エネルギー鉱物資源相はこのほど、インドネシア政府と中国海洋石油総公司が西パプア州のタングーからの福建省への液化天然ガス(LNG)の輸出価格引き上げで合意した、と発表した。1年半にも及ぶ交渉の末、売却価格は2倍以上になった。政府は国内供給を増やす方針を強調しており、将来、日本向け価格にも影響を与える可能性がある。
地元メディアによると、上限価格の算出方法を変更したことで、100万BTU(英国熱量単位、約25立方メートル)当たり3ドル40セントから8ドルに上がった。インドネシア政府は昨年から取引価格が国際価格からかい離しているとして改定交渉を進めていた。同相は「(輸出価格値上げは)将来の政府にとっていいニュースだ」と成果を話す。
価格は2015年に10ドル30セント、16年には12ドル、17年に13ドル30セントに段階的に引き上げ、18年輸出分からは再び価格交渉をする。契約は34年までで、福建省へのLNG輸出の政府収入は現在に比べ年9兆ルピア(約850億 円)増え、12兆5千億ルピアとなる見込みだ。
価格は2倍以上に上がったが、まだ値上げが必要との声は強い。インドネシア資源研究所のマルワン・バトゥバラ事務局長は経済紙インベスター・デイリーに対し、価格改定に一定の評価を示した上で、「8ドルでは適切ではなく、さらに値上げするべきだ」と主張。現在国内へのLNG供給価格は100万BTU当たり11ドルほどで輸出価格より高くなっている。マルワン事務局長は少なくとも輸出価格は国内価格と同額にすべきと主張した。
国内供給価格が高いのは、ガス輸送パイプラインや再ガス化設備などインフラが整っていないためで、国内に回したくても回せないのが現状だ。
石油・ガス上流事業監督機関SKKミガスによると、昨年の天然ガスの国内供給率は52・1%。03年の25%からは大幅に増えているが、政府は原油輸入を抑えるため、インフラ整備を急ぎ、国内供給をさらに増やす方針を示している。
「タングーLNGプロジェクト」には三菱商事や国際石油開発帝石など日本企業も参画しており、関西電力が最大年間100万トンの輸入契約を結んでいる。
また、ジェロ・エネ鉱相はタングーから韓国に輸出するLNGについても値上げの交渉中で、近く新価格を公表するとしている。(堀之内健史)