知事代行もブカプアサ 「大半は非常に寛容」 キリスト教徒の華人

 キリスト教徒の華人、アホック・ジャカルタ特別州知事代行は2日、ラマダン(断食月)に合わせて州内のモスクなどを訪問しムスリムとの親睦を深める「サファリ・ラマダン」を開始した。断食明け(ブカプアサ)の食事を共にする政府高官らの恒例行事だが、キリスト教徒が知事の立場で公式にモスクを訪れてブカプアサに参加するのは初めて。

 2日、南ジャカルタのアッタクワモスクを皮切りに訪問を開始した知事代行は3日、中央ジャカルタ区役所で同区のサエフラ区長らとブカプアサに参加。イマム(礼拝の先導者)の笑いを交えた説教を聞きながら、この日午後5時52分に設定されたマグリブ(日没時の礼拝)を待った。両手を前に出し、本を読むように手のひらを上に向けるイスラム式の姿勢で祈る職員とともに、知事代行は目を閉じ頭を下げて祈っていた。
 知事代行はブカプアサ後、じゃかるた新聞の取材に対し、「ブカプアサを皆で迎えて親睦を深めるのが伝統だ。(出身地で県知事も務めた)バンカ・ブリトゥン州東ブリトゥン県でも同じように祝っていた」と語った。
 2日にはキリスト教徒であることを理由に訪問を拒否したモスクがあったが「国内のムスリムの大半は非常に寛容だ。人口の93%をムスリムが占める東ブリトゥン県でキリスト教徒の私が県知事になった。これを寛容と呼ばずに何と呼ぶのか」と、問題にしない姿勢を見せた。
 英字紙ジャカルタポストは2日の訪問について「いつも大声で話す同氏が(モスクの中では)静かに恭しくあいさつした」などと報じ、「異教徒の知事代行が訪問してくれるなんて信じられない。訪問はジャカルタが宗教的に寛容なことを示している」と話す市民を紹介した。
 一方で知事代行は「まだ信条や人種で人を差別する人がいる。国是『多様性の中の統一』に照らし、あってはならないことだ」と批判。東ブリトゥン県の思い出にも触れ、「小学校から高校までイスラム系の学校に通ってムスリムの文化に親しんだ。仮に異教徒がモスクに入ってはならないなら、どうやってイスラムへの理解を得るのか」と話していた。
 同氏の発言を受け、国内最大のイスラム組織ナフダトゥール・ウラマ(NU)のハシム・ムザディ前議長は3日、多様な意見があるとした上で、預言者ムハンマドが異教徒のモスクへの立ち入りを禁じた事実はないと指摘。「彼らが寛容性を獲得する途上にいるということを理解してくださるよう期待する」と語った。(田村隼哉、写真も)

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