カラ氏、現政権を強く批判 ハッタ氏、官民連携を提示 カディン大統領対話
インドネシア商工会議所(カディン)は20日「大統領候補との対話」を開き、各候補者は財界の要望に回答した。ユドヨノ政権1期で経済諸政策のタクトを振ったカラ前副大統領と、2期で経済調整相を5月まで務めたハッタ元経済調整相は、現政権との距離の違いが際立った。
■プラボウォ陣営
プラボウォ氏は5年以内に段階的に燃料補助金削減することや、民間企業の輸入品との競争力強化を支援する考えを示した。「世銀基準で貧困者が1億人いる」と大きな数字を出すプラボウォ節は健在。汚職や外国などの仮想敵をたたき「強い指導者像を示す」のがプラボウォ氏の政治手腕だが、これまでの政権たたきはしなかった。09年から今年5月まで経済調整相を務めたハッタ氏に配慮したとの見方がある。
ハッタ氏はインフラ開発について「費用捻出のために、官民連携(PPP)のスキームで民間が入れるようにする」と自身が手がけた政策を紹介した。カディンは閣僚や国営企業などのさまざまな関係者が絡むインフラ計画の管理を、大統領の下に一元化すべきと要請。政権内で主導的立場にあったハッタ氏は「研究や調査はもう十分だ」と語るに留めた。
■ジョコウィ陣営
「私もカディンのソロ支部にいた」というジョコウィ氏は、物流・電力コストが諸外国より高いため競争力が保持できないという、長らく指摘されるインドネシア経済の問題について、従来の技術的な解決策を提唱。さらに、人材開発、インフラ開発、許認可手続きの迅速化、地方中央で重なり合うこともある法令の調整、土地取得を容易にすることなどの課題も指摘した。ラフマット・ゴーベル氏(パナソニックゴーベルグローバル会長)の国内産業競争力育成の要望にも、インフラ開発、行政改革で支援すると話した。
カラ副大統領候補は04年〜09年の副大統領時に電力問題を指揮。「電力に限っては私が(副大統領を)辞めてから止まった」「輸入品ばかりが多いのは『輸入マフィア』がいるからだ」と指摘。インフラ開発でも、「経済調整相のほかに、別のコーディネーターがいるからうまくいかない」と調整相を務めたハッタ氏に痛烈な皮肉を見舞った。
■日曜討論3回目
22日のテレビ討論会は外交・安全保障がテーマ。
元陸軍将校のプラボウォ氏は拳を振りかざし「国の富が海外に出て行ってしまう」と持論を展開。海外出稼ぎについては「そうせざるを得ない人がいる。国内に仕事がないからだ」。 ジョコウィ氏は「パレスチナが国連に加盟するのを助ける」と話し、兵器産業を育て兵器を近代化することで、海洋国家の安全保障を強化するとの考えを示した。(吉田拓史)
バクリー氏の土俵
カディンは伝統的にゴルカル党に近い。この討論会自体も1994年〜2004年に会頭を務めたバクリー・ゴルカル党首が率いる財閥が後援。前会頭のヒダヤット工業相も年内に行われるゴルカル党首選に出馬予定で、現会頭のスルヨ氏もバクリー傘下の石炭開発会社の理事を務める蜜月ぶりだ。プラボウォ陣営のバクリー氏の土俵とも言える会場にジョコウイ氏は乗り込んだ。
ただし、テレビ放映は党派性に配慮し、バクリー氏が保有するTVワンと政治ライバルのスルヤ・ナスデム党首が保有するメトロTVが共同放映。両陣営で分け合った。