TV討論、初回から舌戦 人権や汚職テーマに 正副大統領候補
大統領選挙(7月9日投開票)の第1回討論会が9日、南ジャカルタ・スマンギのバライ・サルビニで開かれ、ジョコウィ―カラ組とプラボウォ―ハッタ組が「民主主義の確立、清潔な政府、法の支配」について議論を交わした。
調和を重んじるジャワ人のジョコウィ大統領候補は、行程表をどう実現するかについて語り「チナ(華人の蔑称)の子ども」と誹ぼう中傷を受けた人種差別問題について、静かな怒りを示し「例に出すべきことはあるが、話したくない」と触れなかった。
対照的に、マカッサル出身のカラ副大統領候補は人権問題に触れ、プラボウォ氏が関与した活動家拉致、98年の暴動について、やんわりと詰問。大統領選出馬の「アキレス腱」とも言われる点について尋ねられたプラボウォ氏は、軍人として、爆弾を持つような人間が国民の平和な生活を脅かすことを抑止するよう尽くしてきたという回答に迂回し、「シンガポールなら死刑を下される」と爆弾テロに対する断固たる態度を示した。だが、元陸軍特殊部隊司令官は途中で「あなたが意味することは分かっている」と感情を露わにしたが「私は人権を管轄する人間ではない」と応えなかった。
プラボウォ氏は潜在的にとても豊かなインドネシアが、民主主義、政府システムが効率的ではないせいで、本来の実力がでないと強調。特に中央・地方政府の膨大な汚職を取り上げ「断固たる政治」でこれに当たるとした。「清潔な水、安い食事、無料教育、医療に手が届くようにし、道を村々に通し、鉄道、港を整備する」とし、低所得者層に富を届かせるとうたう政策を掲げた。
一方、ソロ、ジャカルタの首長を務めたジョコウィ氏も、中央・地方政府をめぐる汚職や低いままに留まる行政能力に時間を割き、中央からの交付金に依存度が高い地方政府で予算の効率を上げること、中央と地方の法令が異なる内容を指す場合が多いことに関しても「中央の書いた線に従ってもらう」とテクニカルな部分にこだわった。
両者とも政党、政府システムが高くつくことが汚職の原因だとする司会の汚職撲滅研究者ザイナル氏の提起に同意し、行政改革を約束した。「約束が守られた試しがない」(政治心理学者ハムディ氏)ことを候補者が裏切ることが求められる。(吉田拓史)