ジョコウイ氏への誹謗中傷 NUの支持獲得に躍起 大統領選スタート 両陣営

 大統領選の選挙戦が4日始まった。序盤から早くもジョコウイ氏への誹謗中傷が出回っている。焦点は最大イスラム団体の支持獲得だ。ユドヨノ大統領が運動過熱に懸念を示した。
  プラボウォ氏の追い上げで、ジョコウイ氏との差が詰まっていると伝えられる。プラボウォ陣営は主義主張の違いに目をつぶり、総選挙の得票の半数に迫る大連合を築き、有力者が保有するテレビ局は積極的に宣伝を流している。しかし、信頼できる世論調査はまだなく、両陣営とも自陣に優位な形勢作りに必死だ。

「葬儀の案内状」も
 民族・宗教差別の中傷が目立つようになった。西ジャワ州、東ジャワ州のイスラム寄宿舎にジョコウィ氏を誹謗するタブロイド紙が大量に配られた。表紙は「操り人形の大統領候補」の見出しとメガワティ氏にひれ伏すジョコウィ氏のイラスト。もうひとつがソーシャルメディアで流布したジョコウィ氏の「葬儀の案内状」。「黄金菜(ウェイ・ホンリョン)」という架空の華人名も付け「ジョコウィ氏の父はチナ(華人の俗称)」「キリスト教徒と福建が背後にいる」などとやゆしている。
 ジョコウィ氏は中部ジャワ州ソロ出身のジャワ人でムスリムだが、2012年のジャカルタ特別州知事選でもファウジ前知事陣営が人種・宗教差別キャンペーンを繰り広げ、第1回投票で大差だったジョコウィ氏に決選投票では7%差まで迫った経緯がある。差別、中傷の影響が出たとも見方もあった。

2人、握手せず
 両大統領候補は3日総選挙委員会(KPU)の開いた式典で「平穏な選挙戦」を誓い合ったが、すでにこのような中傷があり、ジョコウィ氏は演説で「誹謗中傷、暴力、脅迫のない、人と人とを結びつける選挙にしなければならない」と暗にプラボウォ氏を批判し、握手しなかった。国営アンタラ通信によると、ジョコウィ氏は4日の闘争民主党(PDIP)幹部との会合で「中傷を受けたため深刻にならざるを得なかった」と話した。 
 プラボウォ氏の側近ファドリ・ゾン氏は3日「プラボウォ陣営は中傷を一切していない」と回答した。

6800万人の争奪戦
 両陣営は「ナフダトゥール・ウラマ(NU)」を引っ張り合う。インドネシア調査サークル(LSI)によると、国内最大のイスラム団体NUは有権者1億8680万人のうち38%、約6800万人を占める。NUであることが、投票行動に直結するとはかぎらないが、NUを構成するイスラム法学者は地域の名士で一定の集票力があるとみられる。NUのサイド議長はプラボウォ氏支持の構え。NUを母体にする民族覚醒党はジョコウィ氏支持とねじれたが、09年総選挙を前に分裂した苦い過去があり、意見の統一に慎重だ。
 プラボウォ氏はNUの法学者、マーフッド元憲法裁長官を選対本部長に引き入れた。モスク評議会議長のカラ副大統領候補は4日、NUを含むキアイ(イスラム指導者)300人による会合に出て支持を取り付けた。
 一騎打ちを横目にみる民主党は、ユドヨノ党首が選対入りした閣僚の辞任や国軍・警察、メディアの中立を求め、悪質なキャンペーンを止めるよう要請。選挙の過熱に注意喚起した。


財界支持者に熱弁 ジョコウィ氏

 ジョコウィ氏は4日、南ジャカルタのホテルで実業家千人を前に講演し、自身が家具輸出を手がけた実績から、実業を知るのは自分だと誇った。「実業には価格、品質、時間を守ることしかない」「大臣には目標を与え、それをやり遂げられなければ更迭する」と語り、熱烈な拍手を浴びた。エネルギー政策では「改革できないのはそこに利権が存在するからだ」と熱弁。講演会では専門家が物流インフラ開発、燃料補助金削減などの意見を提案した。ジョコウィ氏を支持する財界関係者が主催し、経営者協会(アピンド)のソフヤン・ワナンディ会長らが出席した。(吉田拓史)

バンドンで支持訴える プラボウォ氏
 グリンドラ党の大統領候補プラボウォ氏は5日、西ジャワ州バンドンを最初の遊説先に選び、連合を組むゴルカル党党首のバクリー氏を伴い支持を訴えた。
 4日にバンドン入りしたプラボウォ氏とバクリー氏は、市内のサテ・カンビン(ヤギ)の店で夕食を食べ、市民と交流した。市内のホテルで開催された国民信託党(PAN)や連合政党の支持者に対する集会では選挙戦略や政権公約を説明し協力を求めた。5日はバンドンの中小企業関係者や市内の市場を視察する。6〜8日にかけてはインドネシアの人口の約20%を占める西ジャワ州を皮切りに、中部ジャワ州スマランやジョコウィ氏のお膝元のソロで遊説する予定だ。(小塩航大)

政治 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly