両陣営、囲い込み競う 大統領選 社会勢力の集票 4日から選挙戦
総選挙委員会(KPU)は31日ジョコウィ、プラボウォ両候補の大統領選(7月9日投票)出馬を受理した。大統領選キャンペーンは4日から7月5日まで。2陣営による1回投票で決まる天下分け目の決戦は、群島にひしめく多様な社会勢力の「囲い込み」のさなかだ。
KPUは1日、候補者の審査を終え両大統領候補に投票番号を与えた。候補には大統領選専用の銀行口座を開設し選挙資金の管理を集中させるよう求めた。イダKPU理事は候補者には厳格な報告義務を課し「透明性と説明責任」を求めた。大統領選挙法は個人献金は10億ルピア(約900万円)、団体は50億ルピア(約4500万円)以下と規定する。ただ過去の大統領選では実態との違いが指摘されている。
ジョコウィ陣営は口座を公開し少額寄付を集める戦略。2008年米大統領選でオバマ氏がソーシャルメディアを生かし小口寄付を集めた。街頭の運動員の徴収も含む寄付は、ジョコウィ氏の「大衆に近い政治家像」と符合し、富豪のプラボウォ兄弟との対比になりそうだ。ジョコウィ陣営側の日刊紙メディアインドネシア(31日付)によると、27日開設の3口座には711人が献金し、合計1億9243万5087ルピア。5万〜10万ルピアの少額寄付者が全体の68%に上る。
中立の民主党が割れている。人気のダフラン国営企業相は綱引きの末に31日、ジョコウィ氏支持を表明。国営企業改革に乗り出し、国会の圧力で修正を余儀なくされたものの「大衆に近い改革派」と親しまれる。世論調査では一時ジョコウィ氏と競ったが、民主党が低迷したため出馬の道筋が立たなかった。
ダフラン氏は最大地方紙網「ジャワポスグループ」の元CEO(最高経営責任者)でいまも「ボス」の立場。プラボウォ陣営にはテレビ局5局などがあるが、ジョコウィ陣営はテレビ局を1局、新聞1紙のみ。ダフラン氏の加入は追い風になる。ジャワポスの積極的な報道はダフラン氏の人気に一役買ったとみられている。
同じく民主党予備選で名前を売り、知識人の人気が高い政治学者アニス・バスウェダン氏もジョコウィ陣営広報担当に就任。一方、民主党のユドヨノ党首の次男や義弟はプラボウォ陣営入りを検討している。
NUめぐる争い
国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)の行方が両陣営の最大の関心事。両者は要人と会見を重ねてきたが、各地域の名士であるイスラム知識人らの意見は割れており、一つの態度に固まるかは不透明だ。第2のイスラム団体ムハマディヤも中立を宣言した。労働組合総連合(KSPI)、4自警団、イスラム強硬派FPIがプラボウォ氏を支持。退役軍人、州県市の首長、名士らの支持も競う。(吉田拓史)