宗教相が辞任表明 周辺100人不正旅行か 巡礼預金汚職疑惑
巡礼者預金を不正流用した疑いで汚職容疑がかかったスルヤダルマ宗教相(開発統一党=PPP=党首)は26日、辞任を表明した。同容疑者周辺の約100人に預金や国費で旅行させた可能性も新たに浮上。汚職撲滅委員会(KPK)は捜査対象を広げ、メガワティ政権(01〜04年)から指摘された巡礼預金の汚職疑惑に手を入れる。
スルヤダルマ容疑者はこの日午後、西ジャワ州ボゴールの大統領私邸でユドヨノ大統領と会い、辞任の意志を伝えた。28日にもユドヨノ大統領に辞表を提出する。後任は近く発表される見通し。在職中に汚職容疑で辞任に追い込まれた閣僚は、競技場建設に絡む収賄罪に問われたマラランゲン前青年スポーツ相=公判中=に次いで2人目。
巡礼予定者が積み立て宗教省が運用する巡礼預金は透明性が極めて低く汚職疑惑が常に取り沙汰されてきた。巡礼預金をめぐって、サイード・アギル宗教相(01〜04年)は退任後の05年に起訴され、禁錮5年判決。後任のマフトゥ宗教相(04〜09年)も国会で証人喚問を受けた。この2者の後任がスルヤダルマ容疑者だ。
金融取引報告分析センター(PPATK)によると、巡礼預金は80兆ルピア規模に膨らんでおり、利息が毎年2.3兆ルピア程度ある。この利息分の流用が指摘されてきており、少なくとも2300億ルピアに不正な取引が認められる。PPATKは昨年1月にはPPPの党員ら20人が利息を乗用車や家具などの購入に充てた形跡があるとしていた。さらに同容疑者は33人を国家予算による巡礼に招待しており、申告した費用を水増しした疑いもある。
一方、汚職撲滅委員会(KPK)の捜査では、スルヤダルマ容疑者の親族や同容疑者に近い国会議員、宗教省職員ら計約100人が政府主催巡礼ツアー制度を悪用してメッカを旅行した疑いがあることが判明。国の巡礼運営委員会(PPIH)派遣団として偽名で登録したり、一般巡礼者の預金やその参加枠が充てられたりした可能性がある。
PPIHの派遣メンバーは同省巡礼総局が取りまとめる。KPKは総局長のアンギット・アビィマニュ容疑者が不正を把握していたとみて今後、同容疑者周辺を集中的に調べる。
同省は巡礼ツアー客が宿泊するサウジアラビア国内の施設調達を実態より高く偽り、必要経費として計上。水増しのために不動産価格が安い地域の施設を採用する一方、実際に価格の高い施設も選んでおり、不正発覚を防ぐための偽装工作だった疑いがある。国家損失額は2006年〜13年で4.7兆ルピア(420億円)に達する可能性もある。
スルヤダルマ容疑者は「執行部は自分を支持している」と党首職は続投したい考えだが、一部の地方支部は辞任を求めている。党は大統領選の支持候補をめぐり激しく党内対立したが、反主流派はラフマット・ヤシン前西ジャワ州支部長(ボゴール県知事)が逮捕されて以降、グリンドラ党のプラボウォ大統領候補支持でスルヤダルマ派に押し切られた。