宗教相を容疑者認定 巡礼預金を不正流用か 大統領選に影響も
宗教省の巡礼者預金に使途不明金が発覚した問題で、汚職撲滅委員会(KPK)は23日夜、預金の不正流用に関与したとして、スルヤダルマ宗教相(開発統一党=PPP党首)を汚職撲滅法違反の容疑者として公表した。同容疑者は党内の対立をまとめ、7月の大統領選でグリンドラ党のプラボウォ候補支持する方針を決めたばかり。捜査の進展次第では、政党連合の構成に影響する可能性もある。
問題になった預金は、政府主催の巡礼ツアー参加希望者から集めた資金を積み立てる仕組みで、制度を利用し毎年20万人が巡礼する。同省巡礼総局が希望者の登録や預金の管理などを統括するが、2012年から13年にかけ、数千億ルピア規模の使途不明金が出ていた。
巡礼に関する物品調達や資金運用で不正があったほか、複数の宗教省関係者が他人の預金を使い巡礼に行った可能性があるとみて捜査していたKPKは、国会所管委員会委員らの聴取などを経て、スルヤダルマ容疑者の関与が濃厚になったと判断した。
同容疑者に対する海外渡航禁止6カ月の処分を法務人権省に請求し、同日認められた。同容疑者は23日、地元メディアに「なぜ私が容疑者になるのか理解できない」と容疑を否認し、大臣辞任の意志もないと強調した。
KPKは、バルル・バヤト事務次官やアンギット・アディマニュ巡礼総局長ら宗教省幹部、当時の国会第8委員会(社会福祉・宗教担当)委員長のジャズリ・ジュワニ議員(福祉正義党=PKS)の関与も捜査。22日夜からは、中央ジャカルタの宗教省内にある大臣や次官執務室などを10時間以上に渡って捜索し、大量の書類を押収した。
党内では大統領選の連合相手について、闘争民主党(PDIP)のジョコウィ候補にするかプラボウォ候補にするかで意見が二分していたが、二転三転の末に、スルヤダルマ容疑者は自らの推すプラボウォ氏支持で党内をまとめた経緯がある。容疑者認定を契機に党内の路線対立が再燃すれば、政党連合の見直しを求める声が上がる可能性もある。
現職閣僚が刑事事件の容疑者になるのは、国発注の競技場建設で受注企業から現金を受け取ったとされるアンディ・マラランゲン前青年スポーツ相(容疑者指定後に辞任、現在公判中)に継ぐ2例目。(道下健弘)