マーズ国内感染ゼロ 7州で約20人隔離 帰国者感染疑い
サウジアラビアで発生した新型コロナウィルス「中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)」の感染拡大に不安が広がる。保健省は9日、マーズ感染に似た症状で死亡した巡礼帰国者2人のうち1人の検査結果は陰性で、国内感染者はいないと発表。世界最大の巡礼者を送り出すインドネシアでの感染阻止に向け対策を急ぐ。
陰性と判明したのはバリ州デンパサールの病院で6日に死亡した女性。4日に北スマトラ州メダンで死亡した男性の検査結果はまだ発表されていない。
保健省によると、これまで巡礼帰国者計77人の検査を国家感染症研究所で実施し、全員が陰性だった。ジャカルタ特別州では今月に入ってから11人を検査した。検査結果で陰性反応を検出するには12時間、陽性反応には48時間かかる。ナフシア・ムボイ保健相は「国内でまだ感染者は確認されていない。感染が発見された場合、国内の指定病院と連携して早急に対処する」と強調した。
マーズ感染の疑いのある巡礼帰国者数は増加の一途をたどる。帰国者が多いバンテン州タンゲランのスカルノハッタ空港では8日、空港職員1人が州内の病院に隔離された。9日はメダンで4人、西スマトラ州パダンで2人、東ジャワ州クディリで1人、西ジャワ州バンドンで4人が新たに隔離され、7州で約20人に感染の疑いが出ている。
感染阻止に向け、政府は感染しやすい65歳以上、12歳以下に渡航延期を勧告しているが、世界保健機構(WHO)の渡航制限はまだ無く、国内に感染者が出ていない状況で渡航は禁止できないとしている。
インドネシアからは毎年、ハッジ(大巡礼)に約20万人、ウムロ(小巡礼)に約75万人が参加している。アチェ州からは今月、予定通り80人が出発する。アリ・グフロン・ムクティ保健副大臣は「巡礼はムスリムの義務。渡航前にインフルエンザ用のワクチンを接種し、帰国後に必ず受診してほしい」と渡航者に注意を呼びかけた。
同省は巡礼者へマーズ予防パンフレットやマスクを配布して注意喚起する。だがマーズはワクチンや抗ウイルス薬も開発されていないため、「パンデミック(爆発的な流行)」の危険性がある。世界各地から巡礼月には300万人超の巡礼者を受け入れるサウジアラビアの保健省は9日、新たに5人の死亡を確認し、2012年以降のマーズの国内死者数が126人になったと明らかにした。(小塩航大)