【ジャカルタ・フォーカス】世銀浚渫事業、州独自に 「融資返済」に批判も ジャカルタ特別州
世界銀行の融資プログラム「ジャカルタ浚渫(しゅんせつ)イニシアチブ」(JEDI)の下で実施してきた首都の治水事業を、ジャカルタ特別州政府が州独自事業へ移管する動きが出ている。完工期前倒しが理由で、当局者は既に使用した融資を世銀に返済するのは「何ら問題なし」としているが、州議会や市民団体からは、国際社会の信用を失うと批判の声が上がっている。JEDIをめぐっては汚職の可能性も指摘されており、治水事業は曲折を経そうだ。
発端になったのは、ジョコウィ知事の発言で、世銀プログラムの下で合意していた工期5年を2年に大幅短縮するとアドバルーンを揚げた。
ジャカルタ地方開発計画庁(バペダ)のアンディ長官は、知事の意向を受け、治水事業のための州予算は十分で、世銀融資のうち使用分を返済することもあり得るとした。
JEDIは、世銀と公共事業省、ジャカルタ特別州が2009年に合意。融資金総額は1億3964万ドル(1兆5千億ルピア)で、公共事業省に8千億ルピア、州に7千億ルピアが配分された。世銀は、浚渫工事のほか、州による適切な河川管理などを融資条件としていた。
州政府が独自事業に組み入れようとしているのは、JEDIの7事業のうち、州所轄となっていた2事業。1事業目は北ジャカルタ・スンタルのセンチョン川の浚渫。2事業目はプルイット貯水池へつながる北ジャカルタのパキン川や大洪水を引き起こすチリウン川などの浚渫。このうち、パキンとセンチョン両川ではすでに工事を始めている。
州政府は今年度の洪水対策予算額を前年比3兆4千億ルピア増の5兆5千億ルピアに増額。浚渫を15年に完工したいジョコウィ知事の意向が反映した形だ。
世銀融資の返済については、州議会内から批判が出ている。サヌシ議員は数年時間をかけ3者で合意したプログラムで「州が単独で返済するのは軽率で、世銀は失望するだろう」と非難した。
非政府組織(NGO)の予算透明性フォーラム(FITRA)のウチョック代表は、実際に2年で完工可能か調査すべきだと主張、「事業横取りにより返済を前倒しすれば、国際社会の印象を悪くする」と警告した。
州公共事業局のマンガス局長は、世銀との約束を変更し州独自事業への移管しても、深刻な影響はまったくないと強気の姿勢を示している。(小塩航大)