1頭1万円で駆除 「害獣殺し」住民2人逮捕 東カリマンタン州警察 農園荒らしのオランウータン 食料不足でヤシの実探し
東カリマンタン州クタイ・カルタヌガラ県ムアラ・カマン郡のアブラヤシ農園で、一頭当たり百万ルピア(約八千六百円)の報酬を得てオランウータンを殺していたとして、国家警察は二十一日、地元住民二人を天然資源・生態系保護法違反の容疑で逮捕した。大規模な農園開発で生息地を追われ、アブラヤシの実を食べるなどしていたオランウータンなど「害獣」の駆除を農園経営会社が指示したとみられ、あらためて希少動物保護を訴える声が高まっている。
地元メディアによると、逮捕された二人は農園近くに居住する住民。警察の調べに対し、二〇〇八年から一〇年にかけ、オランウータン三頭とテングザルなど二十頭以上を殺したと供述。オランウータンは一頭百万ルピア、テングザルなどは一匹二十万ルピア、豚は十万ルピアと報酬額を分類していたという。
当初、農園を運営するマレーシア系のカレダ・アグロプリマ・マリンド(KAM)社の従業員から害獣駆除の依頼を受け、「犬を持ち、狩猟がうまい」との条件を満たしているとして雇われた。犬でオランウータンを追い込んで撃ち殺し、駆け付けた同社従業員が写真を撮った後は死骸を放置していた。駆除した害獣ごとの報酬のほか、二人のうち一人は同社従業員として月給百二十万ルピアも受け取っていたという。
東カリマンタン州警察は、二人が殺したオランウータンやサルなどの骨とみられる八十五個の破片や死骸を写した写真、空気銃、関係書類などを押収。KAM社幹部は取り調べに対し、害獣とみなして駆除していたことは認めたが「保護対象の希少動物は殺していない」などと、オランウータン殺しを否定しているという。
KAM社の役員には退役警察官もおり、企業と警察の癒着で真相究明は困難との見方も根強い。これに対し、同州警のバンバン・ウィダルヤトモ本部長は「退官後、警察官や軍人が企業の役員を務めることはよくあり、問題視する必要はない」と述べ、元警察官であっても事件関与の疑いがあれば捜査すると強調した。
オランウータンは本来、さまざまな果物などを食べるが、アブラヤシ農園開発で森林が消失し、食料が確保できなくなって生息地を追われ、アブラヤシの若い実から栄養分を摂っているとみられる。
世界自然保護基金(WWF)インドネシア・オランウータン保護担当のシャイフル・サレ氏によると、カリマンタンではこの二十年間で、生息地の五〇%が森林伐採や農園開発で減少。「ヤシの実は主食ではない。生息地の減少で豊富にあった食料を確保できず、仕方なく農園に探しに来ているだけだ」と指摘する。
警察による犯人逮捕の報道を受け、抗議運動も活発化している。非政府組織(NGO)のオランウータン保護センター(COP)は二十二日、南ジャカルタ・クニンガンのマレーシア大使館前で抗議デモを実施。オランウータンやワヤン(ジャワの伝統劇)の英雄の着ぐるみを身に付け、マレーシア系開発企業による乱開発で絶滅の危機にさらされるオランウータンの保護を訴えた。
インドネシア・オランウータン・フォーラムは、運営する農園面積の約一七%を保護区に指定し、アブラヤシ栽培を行わないよう配慮するなど、開発と並行して野生動物の保護活動に取り組む企業もあると指摘。官民が生息地保護の対策を講じる必要があると強調した。