ハディBPK長官、容疑者 大手銀税免れ主導の疑い スリ改革前の税務総局長

 汚職撲滅委員会(KPK)は21日、ハディ・プルノモ会計検査院(BPK)長官を、財務省税務総局長時代(2001〜06年)に大手銀バンク・セントラル・アジア(BCA)の不良債権処理に伴う課税に手心を加え免れさせたとして、汚職撲滅法違反の容疑者に断定した。
 KPKによると、BCAは03年7月、1999年に5.3兆ルピアの不良債権を処理したことに伴う課税を免れたいと請求する文書を税務総局徴税課に送った。書面はアジア通貨危機の影響で不良債権が多いためと説明していた。徴税課は04年3月にハディ総局長(当時)に対しBCAの請求を退けるべきとする文書を上げた。不良債権処理費用にも、税務上課税される場合が多いためだ。しかし、ハディ氏は回答を期限の1日前まで引き延ばしたうえ申請を認めた。このため3750億ルピアの税収を失った。
 KPKは二つの証拠を確保したため容疑者に断定したとし、ハディ容疑者は6カ月の海外渡航禁止を科された。この日はハディ長官67歳の誕生日でしかも退職日。BPK内でパーティを開いて職員と歓談する様子が地元テレビ局で流れていたが、夕方、容疑者断定された。アブラハム・サマッド委員長は「捜査対象を広げる。例えば民間側だ」と明言。
 ブスリョ副委員長は22日の会見で「税を免じることへのキックバックがあり、金の流れがあった」と収賄の疑いでも捜査を進めていることを示唆。大企業の脱税に手心を加える代わりに収賄し、捜査当局にまで賄賂を配ったことが公判で認定された税務職員ガユス受刑者の事件との類似性を指摘した。ガユス受刑者は千億ルピア(10億円)もの不正蓄財をしたとされている。
 BCAは97〜98年のアジア通貨危機で破綻し政府管理下に置かれたが、02年に再び民営化されたばかり。大富豪のハルトノ兄弟が筆頭株主で、同兄弟が率いる経営陣のヤフヤ・スティアトマヤ社長は22日「KPKの聴取を受ける準備はある。透明でなければならない」と話した。
■本来KPKを助ける組織
 BPKは政府機関の会計に関する責任を調べる機能を持ち、独立して汚職や財政ロスを監視する。KPKの立件でも汚職事件の国家損失額を算定し、KPKがこれを元に捜査、起訴するメカニズムになっている。だが、ハンバラン競技場汚職事件では会計が遅れ、KPKが、アナス前民主党党首を逮捕する時期が遅れたと非難したこともある。財務官僚のハディ氏が外から長官に就任したことに内部の反発があり、会計検査の結果にも疑惑がもたれていた。汚職監視団(ICW)は10年、「ハディ氏の個人資産は他者から供与されたものが多い」と指摘していた。
 税務をめぐっては、財政改革を進め国際的に注目を浴びたスリ財務相が辞任した10年ごろから、ガユス事件が始まり、汚職事件は依然として続発。税務、税関は長らく汚職の温床とされてきた。サマッド氏は21日の会見で「われわれの工程表には税収、エネルギー資源に関わる部分がある」とこの分野での汚職摘発に意欲を示している。(吉田拓史)

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