【コラム松井】 ムルヨアグン村のごみ処理場
今日もまた、マラン県ムルヨアグン村へ視察者が訪れる。国内ばかりではなく、日本をはじめとする外国からも来る。目的地は、村の中心部からやや離れた、ムルヨアグン統合ごみ処理場である。この処理場は地元住民グループによって管理運営されている。
地元住民グループは2010年に結成された。ムルヨアグン村にはブランタス川水系の河川が流れており、それまで20年以上にわたり、1日当たり30立方メートルのごみが投棄されてきた。08年、当時の村長が一念発起し、「河川へのごみ投棄をさせない」と宣言、09年に住民全員を集めて土地利用計画を話し合って説き伏せた。住民グループ結成後、村は2千平方メートルの土地を用意し、10年12月までに国家予算や州予算などを使って処理場を建設し、11年2月から運用を開始した。今や、広さは8676平方メートルに拡張されている。
現在、この処理場では、1日当たり64立方メートルのごみを処理している。これはムルヨアグン村の5656家屋、7600世帯のごみに相当する。ごみの内訳は無機ごみが45%、有機ごみが39%で、前者は、食べかすなどがアヒルや豚の餌となり、その他は洗浄・加工して業者へ売る。分別は細かく、硬質プラスチックが61種類、オモチャが74種類、ガラスが13種類、アルミ缶が22種類、といった徹底ぶりである。
一方、後者は40日かけてコンポストにし、さらに55日かけて有機肥料にする。有機肥料を作る過程では、県畜産局から進呈されたヤギ11頭の糞も混ぜる。これらのごみ処理で、ハエの発生率が95%減少したという。
住民からは1世帯・1カ月当たり5千〜1万2千ルピアのごみ収集費を徴収するので、毎月3500万ルピア程度の収集費収入がある。他方、従業員の給与や機器の維持管理などの運営コストが毎月8千万ルピアかかるが、処理ごみの業者への売却益を合わせると収支は黒字になる。ただし、用地拡張が難しいため、処理能力の拡大には限界があるとのことである。
住民は河川へのごみ投棄を止め、ごみ処理場で働くことによって雇用機会が生まれ、収入が上がり、生活が豊かになった。河川も以前よりきれいになった。ムルヨアグン村の挑戦は、インドネシア国内の様々な地方政府から注目を集めているが、政府に頼らず、地元住民グループによって自立したごみ処理ビジネスを成立させたことが重要なのである。(JACインドネシア・シニアアドバイザー=隔週火曜日掲載)