市民が見守る投開票

 9日午前7時から午後1時まで、各地のカンプン(下町)や広場、学校などで投票が行われた。ジャカルタでは国会、州議会、地方代表議会の各議員を選ぶ3つの投票箱が並んだ。投票所入り口には顔写真入りの議員候補名簿が張り出され、じっと見入ってから投票に臨む有権者の姿も目立った。

■住宅街に投票所
 午後1時で投票が終了し、すぐに開票が始まった。首都目抜き通りのスディルマン通り裏にある中央ジャカルタ・クボンカチャン。住宅街の道路にテントを張り、設けられた投票所には、子どもから老人まで住民が開票作業を見ようと身を乗り出す。「だって面白いじゃない」。家の前が投票所になったという男性は笑う。
 選挙管理委員が小さく折りたたまれた投票用紙を広げて政党名を読み上げると、各党から派遣された職員たちがメモを取る。全部で200枚を超える用紙を一つ一つ確認する作業が延々と繰り返された。
 開票から約1時間かかって80枚の開票が終わった。テントに大粒の雨がたたきつける。声がかき消されないように読み上げる職員の額にも汗がにじんでいた。5年に一度の総選挙。期待と不安が入り交じった。

■政党の無理強い
 華人が多い北ジャカルタ・プルイット。闘争民主党の地盤だが票は伸び悩んだ。「ジョコウィ氏は支持するが、どの政党も信用できない」。プルイット貯水池周辺で飲食店を営む華人男性アホンさん(52)は棄権した。
 ジョコウィ知事の貯水池整備を高く評価する。不法居住者の移転は難航したが、州に抵抗して突如現れた弁護士やマフィアたちは「居住者を支援する」と装い金銭だけ巻き上げ、立ち去っていった。「橋も道路も完成した。貯水池は素晴らしい公園に生まれ変わる。政党に無理強いされて出馬するのではなく、ジョコウィ氏は5年の任期を全うすべきだ」
 ジョコウィ氏とペアを組むアホック副知事にも期待するが、所属政党のグリンドラ党の躍進に警戒する。党を率いるプラボウォ氏については「1998年5月暴動の黒幕。あそこのビルで華人女性が暴行された」と指さす。「華人が抱えるトラウマは消えない。プラボウォ氏もスハルト氏もやっていることは変わらない。特定の華人を優遇して華人社会の懐柔に利用するだけ。プリブミ(土着のインドネシア人)の反感を買うのはわれわれ一般の華人たちだ」

■人気投票に終始
 汚職疑惑で激震が走った民主党は国会第1党から第4党に転落しそうだが、根強い支持もあった。西スマトラ州アガムのダルマス・ジャイヌンさん(71)は「汚職は党幹部個人の問題」と指摘する。2期10年、少なくとも民主党政権の施策には一貫性があった。「党への支持は揺るがない」という。
 政党不信の声は若年層からも聞かれた。バンテン州タンゲランの雑誌編集者、アンギタ・サラスワティさん(27)は「有権者の心を揺さぶる政党も議員候補もいない」と話す。
 ジャカルタ在住の飲食店経営ドゥタ・スジャガッドさん(24)は「有権者は政治家個人のみ注目する傾向が依然強く、政党のプログラムを一つずつ検証し、議論する機会が非常に限られている」と批判する。「人気投票に終始する選挙を変えなければ、政治に変革をもたらすことはできない」と強調した。(配島克彦、西村百合恵、デワンダル・アリョ・テジョ、アグス・メディアント)

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