東南アジア域内自由に周遊 イはマリンスポーツと医療ツアー クルーズや世界遺産巡り 来年AEC発足
2015年のASEAN(東南アジア諸国連合)経済共同体(AEC)の発足をにらんで、ASEAN10カ国の政府観光局は域内観光市場の成長戦略を打ち出し、旅行客誘致に取り組む。25年までに同市場が4800億ドル規模に成長するとの試算もある。
中間層が急拡大するインドネシアの旅行需要を取り込もうと、中央ジャカルタのジャカルタ・コンベンションセンターで今月開かれた旅行博には10カ国以上の旅行業者が参加した。バンコクのホテルチェーンのアダム営業部長は「AEC発足で域内観光市場は劇的に成長する」と見通しを語った。タイ観光局ブースではスパの魅力を来場者にアピールした。タイ式スパの無料体験コーナーが設置され、担当者は「タイを有望な旅行先として認知してもらう」と力を込める。
ASEAN政府観光局が設置したASEAN観光マーケティング・コミュニケーション・ワーキンググループは、域内10カ国を「単一市場」として域内全域へ旅行客を誘導する仕組みを練る。クルーズツアー、各国の世界遺産をめぐるツアー、自然を満喫するグリーンツアー、文化慣習を体験できるボランティアツアーなどを軸に旅行客を呼び込む計画だ。
12〜15年のASEAN観光マーケティング計画では、各都市のグルメや買い物情報を掲載した旅行サイトの開設、ツアーガイドや観光戦略を練る人材の育成、ホテルや飲食店の衛生基準作りや技術指導に重点を置く。ヨーロッパやアジアなど域外の旅行代理店への売り込み拡大で準備を進める。SNSを活用した宣伝で口コミの顧客獲得を狙う。
インドネシアの観光創造経済省はマリンスポーツ、医療ツアーに注力する方針だ。国内16カ所を観光開発地域に指定し、港湾整備を進める。マリ観光創造経済相は「AECは商機だ」と強調した。
域内観光市場は05〜12年の7年間で12%成長し、旅行客数は前年比800万人増の8900万人に増加した。
■域外観光客に単一ビザ検討
域内の旅行客は現在、ミャンマーを除きビザ免除で渡航が可能だが、今後は出入国税や旅行税を廃止しアクセス向上を図る。域外の旅行者については、一つのビザで域内を自由に通行できる「単一ビザ」の導入を検討している。域外旅行者の需要を取り込む狙いという。(小塩航大、写真も)