京都で勉学、子育て奮闘 「大学院で研究者の夢」 知人に支えられ7年 インドネシア人留学生、ニノさん
学生が人口の1割を占める京都市。6千人の留学生が生活し、うちインドネシア人は約200人だ。古都・京都のインドネシア人留学生の生活と、留学生を支える日本人との交流を紹介する。
立命館大(北区)国際関係学部の博士課程に通うニノ・フィアルタシウィさん(38)一家。2006年、夫の留学に伴い、当時6歳の娘のワンディラちゃんを連れて来日した。在住歴は今年で7年目を迎えた。
「来日当初は、日本語が通じず苦労した」。食品の成分表に記載された日本語が読めず、ムスリムには禁止されている豚やアルコール成分の含有で不安にかられ、ハラル(イスラム教義に沿った)食品の入手も困難で途方に暮れた。
ワンディラちゃんを市内の小学校へ入学させたが日本語ができない。担任の先生から来る学級日誌も読めず、「娘の学校生活を把握したかったが、困難だった」と振り返るニノさん。
「嘆いていても大切な家族を支えられない」と周りの日本語が読めるインドネシア人留学生や近所の日本人夫妻に協力を求めた。先生の連絡には読めるようにローマ字でふり仮名を振ってもらい、成分表の日本語は英語に翻訳してもらって安全な商品を見定めた。学級日誌も同級生の保護者が英語にしてくれた。学校生活への理解を深め、ワンディラちゃんの相談に乗った。
最近はスマートフォンのアプリも活用する。日本の調味料の成分表一覧が掲載されたアプリや、礼拝の際にキブラット(メッカの方向)や時刻を示してくれるアプリも駆使する。公園のトイレで身体を清め、土の上に礼拝用のじゅうたんを敷いて礼拝することもあるという。
3年ほど経ち、ワンディラちゃんの日本語は上達し子育ても落ち着いた。今は地元の中学に通い、4月から3年生。日本の大学に進学することが夢だ。
ただ、ニノさんは大学院に入学し研究者になる夢を諦められずにいた。一念発起し、09年同大の修士課程に入学し、パプア州の自治問題などを研究してきた。子育てに家事、勉学と生活は忙しくなったが、「毎日が充実している」とニノさん。11年には博士課程に進学し研究に没頭している。夫は同大の講師を務め、ニノさんは「夫と娘が私の夢を応援してくれている。家族の支えがあってこそ」と感謝し、「京都での生活が大好き。勉学と子育てと楽しい日々が続くと思う」と話した。 (小塩航大、写真も)