揺れるハラル認証権限 課題は発行料の透明化 政府管轄で 宗教省 25年の実績 MUI

 インドネシアでハラル(イスラム教義に沿った商品・活動)認証の権限に関する議論が高まっている。発行団体として認知されているイスラム学者会議(MUI)に対し、宗教省は権限を移管するよう主張。国会でも権限独占を問題視する声が強まり、関連法案の審議が活発化している。議論の行方は、ハラル認証に関心を持つ日本などの企業にとって、今後の取得手続きに影響を与えそうだ。
 政府が「ハラル製品保証法案」を提出したのは2006年。▽認証は公的機関が発行▽申請は事業者の任意で、義務化しない―などを柱としている。スルヤダルマ宗教相は今月初め「認証権限は、法案に明記されている新設予定の国家ハラル製品保証庁(BNP2H)に移管すべきだ」と政府方針を国会議員らにぶつけた。
 移管を拒むMUIとこれを支持する政党会派の反対により、8年間、審議は平行線のまま事実上放置されてきたが、先月末に始まった作業部会では、激しい論戦が繰り広げられている。
 召喚されたディン・シャムスディンMUI最高顧問は「われわれこそが国内で唯一、ハラル可否のファトワ(宗教見解)を下せる団体だ」と真っ向から法案に反対。ハラル認証を1989年に開始し、25年間に上る実績も強調した。同顧問は、国内第2のイスラム団体ムハマディアの議長。
 主要政党は政府機関への移管に賛成し、宗教委員会の副委員長(民主党)は、MUIが長年続けてきた制度は「不明瞭な発行料収入に対する監査がなく、欠点が多い」と批判する。一方、イスラム系政党などはMUIを含めた複数機関による発行を主張。全事業者に対する認証申請の義務化を訴える意見もある。
 議論をけん制したのが、最大イスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)。「法案審議は権限独占を狙う宗教省とMUIの論争であり、中断すべきだ」と4日、声明を発表。ハラル認証は開かれた公共サービスであるべきと、横やりを入れた。
 NUもこれまでに内部にハラル検証部門を設け、認証を独自発行してきたが、MUIに比べ知名度は低い。審議を先延ばしし、将来、権限の一部を獲得したい狙いがあるとの観測が強い。
 保健省の国家医薬品食品監督庁(BPOM)も、ハラル判断の権限はMUIにあるが、医薬品・食品へのラベル表示認可権は自らにあると主張。各機関の思惑が入り組んでいる。
 現行制度に国内業者は不満をこぼす。発行料の問題に加え、飲食料品製造業者協会(Gappmi)は、手続きに時間がかかりすぎると批判。全ての原材料で検査が必要なため、輸入品の場合はMUI担当者を、食品業者が旅費を負担して輸出国に派遣しなくてはならない。しかし、検査に難色を示す国もあり、支障になっているという。

■ 日本で巻き返し図る マレーシアと差
 マレーシアのナジブ首相は昨年12月に来イした際、ユドヨノ大統領との共同会見の場で「マレーシアのハラル認証をこの国でも広く認めてほしい」と呼びかけた。
 「ハラル認証」は日本でも浸透しつつある。だが、国際的には「イスラム教義で許されたものの認証」という原則以外、統一基準は整っていない。世界ハラール審議会などの国際組織があるが、各国のハラル関連団体が発行し、有効範囲も原則、発行地域に限られる「現地主義」が一般的だ。
 マレーシアは68年、政府機関のイスラム開発局(JAKIM)を設立、いち早くハラル認証制度を整え、日本など各国のイスラム団体との関係を構築してきた。イスラム国家として「インドネシアのハラル認証も認めている」(ナジブ首相)など、公的制度が確立した余裕をみせている。
 一方、インドネシアでは89年にようやくMUIがハラル検査する食品医薬品化粧品調査センター(LPPOM)を内部に設置。日本の業者、団体と関係を深めたのはここ数年で、今年、東京事務所の開設を準備している。ハラル関連ビジネスでマレーシアに大きく水をあけられてるインドネシアは、巻き返しを図っているが、ハラル権限の移管をめぐる議論が足を引っ張りそうだ。(前山つよし)

◇MUI イスラム学者会議。Majelis Ulama Indonesia(マジュリス・ウラマ・インドネシア)の略称。1975年7月設立。26州と10のイスラム団体、政府機関を代表する40人のウラマ(イスラム法学者・指導者)と有識者13人で構成される。社会団体。

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