歌って踊って投票して 選挙戦に芸能人動員 1日報酬  3000万ルピアも

 選挙キャンペーンは16日、モナス(独立記念塔)で開かれた式典後、インドネシアを代表するロック歌手イワン・ファルスの熱唱で幕を開けた。4月5日まで各地で連日開催される屋外集会に歌と踊りは不可欠。政治家の演説もそこそこに音楽が響き渡ると、観衆が両手を上げ、腰をくねらせながら踊り出す。 
 広場に設置されたステージ。巨大な横断幕に「ロマ・イラマとソネタ・グループ」の文字が躍る。集会主催者のPKB(民族覚醒党)の文字より目立つ。党カラーである緑のスカーフを首に巻き付けたロマが登場し、白のエレキギターをかき鳴らす。長年連れ添う大所帯のメンバーたちはインドネシア独自のダンス音楽ダンドゥットのリズムを刻んでいく。
 「PKBの大統領候補」。音楽界の大御所ロマはかつて在籍した開発統一党(PPP)やゴルカル党を離れ、イスラム政党のPKBから大統領選出馬を目指す。屋外集会で、「歌う伝道師」の異名を持つロマはイスラムの教えを説く歌を中心に披露。初日の16日はアチェ州州都バンダアチェの集会に参加した。以降、同党の基盤である東ジャワ州各地を回っている。
 PKBはロック、ポップス界の大御所の支持も取り付けた。ヒット曲を連発してきたアフマッド・ダニはムハイミン党首から直々に要請を受け、同党のキャンペーン・アーティストとして各地を巡回している。

どの政党もOK
 特定の政党を応援する歌手がいる一方で、どの政党の依頼でも受け、選挙キャンペーンは書き入れ時と意気込む歌手も多い。
 ダンドゥットの人気女性歌手、イヌル・ダラティスタはキャンペーン期間中、「赤、緑、青、すべての色の政党からオーダーを受けている」と話す。連日各地を回り、朝から夜まで歌っているという。「ただ参加するのはジャワ島内だけ。島外は各地の後輩たちに譲りたい」
 テレビで見慣れた知名度のある人気歌手だけでなく、普段は結婚式などの巡業をしている各地の地元歌手の稼ぎ時でもある。地元メディアによると、中部ジャワ州プカロンガンの歌手は出演料を通常の2倍につり上げた。1箇所に付き600万ルピアで、1日5箇所回れば3千万ルピアになるという。
 ヒット曲の歌詞を立候補者の名前や党名に置き換え、替え歌にして繰り返し歌う。歌を通じて観衆に覚えてもらうのがキャンペーン歌手に課された主な仕事だ。(蓜島克彦)

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