防災で日イ連携進む アプリ開発や研修 災害教訓、次世代へ 大学・政府機関
東日本大震災が発生して11日で3年が経過した。災害大国のインドネシアと日本の大学機関が防災分野での連携を進めている。大阪大とガジャマダ大(UGM)はこのほど、被害状況を地図上で確認できるスマートフォンアプリの開発に着手。立命館大はインドネシア政府関係者を対象にした防災研修を実施している。両国の災害教訓を次世代へ生かす取り組みだ。
アプリでは住民が提供した被害状況を基に、危険度の高い地域を米グーグルの地図サービス「グーグルマップ」上に色別(赤・黄・緑)で示す。地図を拡大すると詳細な被害状況が手軽に確認できる。安全な避難経路の確保や被災者の生存確認に役立てる。アプリはグーグルのアプリサービス「プレイストア」から無料でダウンロードできるようにするという。
大阪大の塚本俊也特任教授は「災害時に自治体ごとで情報を集めるが、一元化できないのが問題。自治体を超えて被災者が情報を共有し合うことで迅速に対応できる」と指摘する。
UGMのあるジョクジャカルタでは2006年に中部ジャワ地震、10年のムラピ山噴火が発生し、学生らも多数被災した。当時、危険地域や避難場所の情報提供が遅れ、混乱が生じた。
災害情報収集のシステム構築に向け、注目したのがスマートフォンだ。調査対象地域で普及率が約40%以上で、瞬時に情報が伝わる。塚本教授は「災害情報の収集システムを被災者の手で作る。地域人口の約10%の情報があれば被害状況を把握できる」と力を込める。
アプリは昨年10月に開発を開始。8月まではジョクジャカルタ州内で試験運用する。津波など災害のほかに、インフルンザの感染者傾向の予測などにも応用できる。英語にも対応させ、外国人の被害情報の収集に活用する。物資配給ではインドネシア赤十字(PMI)と協力していく予定だ。
被災地を視察
立命館大は11年、防災分野の人材育成を目指し国家開発計画庁(バペナス)と提携。13年までの2年間でインドネシア政府関係者計75人に防災研修を実施した。昨年6〜7月には25人の参加者が東日本大震災の被災地(岩手県宮古市、釜石市、大船渡市、陸前高田市)を視察した。
実際に被災地の復興を担当する市長や職員らによる講演を聴き、同大理工学部の学生らが建設した宮古市鍬ヶ崎地区の簡易集会所などを見学。避難経路などの防災マップ作成方法について意見交換した。
北スラウェシ地方開発企画局からの参加者は「住民を巻き込んだ防災計画が災害に強い街づくりにつながることを学んだ」と語った。同大担当者は「日本の災害教訓がインドネシアで生きる。人材が育てば国民の防災意識も高められる」と強調した。(小塩航大)