小学校に環境教育を 南タンゲラン市で聞き取り NGOのイ教育振興会
非政府組織(NGO)「インドネシア教育振興会(IEPF)」が4日、子どもの生活実態を知るための聞き取り調査で、バンテン州南タンゲラン市のカンプン・コチェを訪れた。今回の調査は同市の約340の小学校に2017年から「環境教育」を正式導入するための第一歩。調査結果をもとに教材開発などの支援方針を固めていくつもりだ。
カンプン・コチェは南タンゲラン市の低所得者層の居住区。開発が進むジャングルを横目に、車1台がようやく通れる細い道を抜けると住居が見えた。
調査は環境について複数の質問をして回答を集めるもので、今回は5世帯の母親と子どもが対象。「ごみの収集車はここまで来ない」との回答もあり、行政サービスが徹底していない実態が明らかになった。道に捨てるしかないため、周辺にはごみが散乱していた。
ビン、缶、ペットボトルは回収車が持って行くが、住民はそれがリサイクルできるとは知らなかった。学校でも環境に関する学習は受けていない。「環境という概念を理解してもらわなければごみは減らない。分別も進まない」と同会代表の窪木靖信さん(48)は言う。
自治体はごみ処理場の施設援助を依頼するが、ごみの分別やリサイクルの周知など根底から変えなければいけない。そのために子どもに理解を広め、未来へつなげていきたいと語った。
さらに窪木さんは、ポイ捨ての習慣で増え続けたごみは、健康に影響をもたらす可能性があると危惧している。IEPFはかつてイタイイタイ病が発生した富山県のNGO。「日本の負の遺産を繰り返してはいけない」という思いでプロジェクトを進めてきた。
聞き取り調査はJICAの草の根技術協力委託事業として、4年間カンプン(田舎・貧困地域)、低所得者、低中所得者、市場などの五つの地域から各20のサンプルを年2回集める。生活習慣やごみ捨てに関する知識などの質問のほかに、各地域に対する行政の取り組みの周知度についても回答を求める。
調査結果や実験校での観察をもとに、南タンゲラン市が2017年に予定する市内小学校への環境教育の正式導入に向けて指導内容や教科書の作成に反映させるという。今年6月には副市長や教育局長、環境局長が来日し、日本の生活環境、企業・行政への取り組みを視察する予定だ。 (西村百合恵、写真も)