選挙費用1.9兆ルピアのみ? 報告しぶる候補多数 不透明なカネ野放し

 総選挙参加12政党は2日までに、総選挙委員会(KPU)に選挙運動費用の第2期報告をした。第1期と合わせ、政党は総額1.9兆ルピア(165億円)を費やしたことになる。だが、本当にこれだけだろうか。制度の透明性は低く、見えないカネのやりとりを見張る仕組みにはなっていない。  
 KPUによると、3066億ルピアのグリンドラ党が最も多く、364億ルピアの正義統一党が最も少ない。KPUは報告を5日まで調べて、その後、会計事務所が検査する。報告書は政党本部と国会議員がKPU本部に提出、政党地方支部、地方議会選候補はKPU地方支部に提出した。
 しかし、政党、議員候補側には2日午後6時の締め切りを守らないケースが続出。各地で午後5時台の駆け込み提出が相次いだ。総選挙監視庁はバンテン州ではグリンドラ党が締め切り15分遅れ、国民信託党が締め切りを1時間過ぎていたと指摘。さらに2日までに提出できなかった国会議員候補が少なくとも民主党、ハヌラ党、グリンドラ党にそれぞれ数十人〜100人規模いたとみられる。KPUは9日までを猶予期間とし、遅延した候補名は公表しないという。

■資金の出所に言及なし
 制度も欠陥を抱えている。非政府組織(NGO)の汚職監視団(ICW)のアブドゥラ・ダフラン氏は「資金をどうやって得たのかに触れられていない。KPUはいくら使ったかだけを知ったにすぎない」と指摘する。資金の出所を明らかにしなくていいため、例えば、選挙資金を政党、政治家の懐からではなく、ヤヤサン(財団)、オルマス(社会団体)や会社から出した場合、報告の義務はない。資金の流れが分からず、政党、政治家が選挙後に献金先に利益誘導することが野放図にできる仕組みだ。
 資金洗浄監視機関、金融取引報告分析センター(PPATK)のアグス副長官は3日「議員候補と政党幹部、議員らとの間で不審な金融取引がある。われわれは報告を捜査機関に渡すだろう」と語った。
 PPATKは総選挙を前に議員候補らの間でドル取引が増え、不審な取引自体も増加していると指摘。政治家にはルピア建てのほかにドル建ての口座を持つ者がおり、資金の流れを追跡されるのを防ぐためと言われる。賄賂にドルを配った例ではSKKミガス汚職事件があり、公判で政府機関が国会の委員会委員に配っていたことが分かっている。これらの不透明なカネに対する捜査機関には強力な汚職撲滅委員会があるが、選挙の買収行為取り締まりは職掌外で、警察もほとんど動かないため、事前に摘発する捜査機関はない。このままでは、選挙で世話になった分を汚職で返すという状況が続くことになる。(吉田拓史) 

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