KPK弱体化策再び 刑法・刑訴法改正案 権限縮小盛り込む

 大型汚職事件の独立捜査機関・汚職撲滅委員会(KPK)の弱体化の動きが再燃している。刑法と刑訴法の改正案で、KPKの権限を大幅に縮小する条項が多数含まれていることが判明。KPKや市民団体は、残りの任期半年の国会が十分な審議を経ず、法案を制定すべきではない反発している。   
 刑訴法の改正案で問題になっているのは、刑事事件の予備審理を担当するために新設される裁判官だ。改正案では、予備審理裁判官は容疑者の保釈や通信傍受、捜索差し押さえの可否などを判断すると規定。これまでKPKが独断で実施し、汚職犯の賄賂授受の現行犯逮捕を可能にしてきた通信傍受も、同裁判官の許可を得ることを義務づけられる。
 また下級審で無罪判決が下った場合、被告の刑は確定し、被告、検察(KPK)両者とも上訴できないと規定。上級審の量刑は下級審判決を上回ってはならないとする条項案なども盛り込まれた。
 現行の刑法と刑訴法は、オランダ統治時代の法律を基に策定されたもので、植民地時代の遺物との批判があった。
 KPKは2003年に設立された独立捜査機関。国家に10億ルピア以上の損失を与えた疑いのある事件を専門に捜査し、令状なしの通信傍受や捜索差し押さえ、身柄拘束などの独自捜査から公訴権まで強い権限が与えられている。大統領や閣僚を含む政府高官、裁判官、警察官、検察官らの逮捕権もある。

■地元紙、大きく報道
 これに対し、KPKは大統領や法相、国会あてに文書を送り、改正法案を撤回するように要求。これに対し、アミル法務人権相は「法案は昨年3月に国会提出したにもかかわらず、なぜ今になって反対するのか」と批判し、撤回には応じない姿勢を見せた。
 KPK弱体化の動きを、地元各紙がそろって大々的に報じたのを受け、同法相は「刑法と刑訴法は一般犯罪を念頭に置いたもので、特別法である汚職撲滅法を根拠とするKPKの活動を拘束するものではない」と説明。法改正は時代の変化に応じ、裁判までの拘束期間の短縮など人権に配慮したものであることを強調した。
 しかし、非政府組織(NGO)関係者らの不信感は根強い。改正案の策定は法務人権省を中心に進められ、条項案が明るみに出るたびに批判を浴びてきたこともあり、任期切れ間際の現政権や国会ではなく、改選後に時間をかけて慎重に審議するよう訴えている。(道下健弘)

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