止まらない、選挙CM クイズ、報道の体裁借りて放映 もろい監視・運営機関

 大統領候補、党首らが出演するテレビ番組が増えている。運営・監視機関は期間外の選挙広告を抑え込もうとするが、選挙と関係のない周知活動、個人的な番組出演という名目が幅を利かす。広報合戦の過熱はカネによる「物量戦」をエスカレートさせかねない。
▽激しい広報合戦
 総選挙法とKPU(総選挙委員会)令は投票前の冷却期間の21日前から選挙広告を解禁するとしている。だが、「テレビ持ち政党」3党は広告攻勢を強め、規制が無意味になっている。ハヌラ党副大統領候補のハリー氏は民放3局、ゴルカル党のバクリー党首は2局、国民民主党(ナスデム)のスルヤパロ党首は1局を支配。ニュース番組に党派色が出ることはしばしば指摘されてきたが、番組の体裁をとる広報も始まり、波紋を広げている。
 ハリー氏が支配するRCTIとグローバルTVで放映されたクイズ番組「WIN―HTクイズ」。WIN―HTはハヌラ党の正副大統領候補ウィラント―ハリー・タヌスディビヨの略。視聴者が電話でスタジオの問題に答え、正解だと賞品がプレゼントされる。参加者が回答する度に「WINHT」と画面に浮かぶ。放送協会(KPI)は21日、番組を止めるよう要請。もし放送を続ける場合、放送協会に改善を報告するよう要請した。RCTIは他にも両氏が貧困地域を援助したり、露天商を実際に体験したりする番組「インドネシアの夢を実現する」を放映した。援助を受けた住民が2人に両手放しで歓声を上げる場面が必ず挿入される。
 ナスデムが23日にブンカルノ競技場で開いた「内部集会」の「変革への招集」を、党首がオーナーのメトロTVがその模様を1日中延々と「報道」。翌日、保有する新聞は1面トップで報じたことも物議を醸している。
▽効果薄い要請や警告
 これに対し、総選挙監視庁は今月初旬には選挙広告を放映しないよう政党に要請したが、効果がなかった。このため、26日、選挙運営機関のKPU、放送協会などが期間外の選挙広告をなくすことを目的とした特別チームを組んだ。3月16日からの選挙運動期間まで電子媒体で広告を放映しないよう強く警告する共同令を発布。ムハンマド総選挙監視庁長官は参加12政党に対し「われわれは罰則に関して話し合うだろう」と圧力をかけた。国会も規制強化を支持した。
 これに対し、ゴルカル党のヌルル・アリフィン副幹事長は「周知活動であり、選挙広告ではない」と反論し、総選挙法の規制の外にいるとの立場だ。同党は政党には周知のため広告を打つ権利があるとも主張。バクリー党首が率いる財閥はテレビ局売却交渉を国内実業家と進めてきたが、いまだに売っていない。これらは総選挙でフル回転するとみられる。
▽6400万人が初投票
 テレビにはかなりの威力がありそうだ。全人口の平均年齢は27.2歳(10年国勢調査)。有権者も若く、1億8千万人超のうちなんと30%の6400万人が初投票だ。スハルトの独裁政権を経験していない若い世代の政治離れに対し、テレビによる印象付けは効果がある。調査機関によると、有権者が投票先を選ぶ際にテレビを参考にする傾向は依然強い。問題は、KPUなどの規制は法的拘束力が弱いこと。総選挙監視庁は選挙違反に対し国家警察に通報するのが限界だ。(吉田拓史)

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