15首長選挙で収賄  前憲法裁長官の初公判 起訴状でKPK

 地方首長選の不服申し立てに絡む収賄事件で、汚職撲滅法違反などの罪に問われた前憲法裁長官アキル・モフタル被告の初公判が20日、南ジャカルタの汚職特別法廷であった。検察側は起訴状朗読で、逮捕容疑の2首長選以外にも全国13首長選で現金を受け取っていたと明らかにした。被告は「全て事実と異なる」と否認した。
 逮捕段階の容疑は、バンテン州ルバック県と中部カリマンタン州グヌンマス県の2知事選結果をめぐる不服申し立てで、特定候補者陣営から金を受け取り、恣意的な審査をしたというもの。起訴状で明らかになったのは、東ジャワ州知事選や南スマトラ州パレンバン市長選、パプア州内などの13首長選で、1件あたり10億〜200億ルピアの現金を受け取っていたという。
 疑惑発覚の端緒となったルバック県知事選では、バンテン州のアトゥット知事=ゴルカル党、贈賄容疑で逮捕=が、自身に近い候補を当選させる目的で賄賂を贈ったとされるが、同知事が当選した2011年の選挙でも、落選した3候補者の不服申し立てに対抗するためアキル被告に75億ルピアを渡していた。
 さらに、パプア州では2006年から11年にかけ、メラウケやンドゥガ、ボベン・ディグル、アスマットの4県とジャヤプラ市の首長選を有利に運ぶため、同州のアレクス・ヘセゲム副知事=当時、闘争民主党=から計1250億ルピアを受け取っていたという。
 汚職撲滅委員会(KPK)の担当検事は「金の提供やその約束は、審査の結果に影響を与える目的だったとみなすべきだ」と説明した。

■長官になり資産13倍
 アキル被告はゴルカル党国会議員を経て、08年4月に憲法裁長官に就任した。検察側によると、国会議員時代に200億ルピア相当だった被告の資産は同年以降に急増し、逮捕時点で2600億ルピアに達した。賄賂で多数の高級自動車や不動産を購入、金の出所を隠していたとして、検察側は資金洗浄の事実も立証する方針。

   ◇◇
 憲法裁は03年に設置され、違憲立法審査や選挙結果の有効性判断、政党の解散命令権など、強い権限を持つ。民主化や地方分権の進展に伴って生じる紛争を解決する機関としての役割を担うが、政治家出身者が長官や判事になるなど、政治・行政からの独立性に疑問をもたれている。三審制をとる通常の裁判とは異なり、審査は1回のみで、後に不正が発覚しても決定は覆らない。

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