出稼ぎ者保護で合意 労働許可、休暇取得、送金 サウジ政府と労働省
サウジアラビアのインドネシア人出稼ぎ労働者問題で、インドネシア政府とサウジアラビア政府は、インドネシア人出稼ぎ者の待遇改善に向けた覚書を締結する。サウジ政府が同様の覚書を交わすのは4カ国目。
覚書ではインドネシア人労働者の合法的な身分を保障し、休暇取得や銀行振込、インターネット上で雇用者との契約の取り交わしが可能になる。
ムハイミン労働移住相は「出稼ぎ者の覚書は両国にとって歴史的な出来事だ。サウジ政府とは今後、詳細を協議していく」と歓迎した。サウジ政府に対して、メードなどインドネシア人労働者の給与引き上げを要求していくという。
しかし、出稼ぎ者保護を訴える非政府組織(NGO)のワヒュ・スシロ氏は、サウジアラビアで外国人労働者が「身元保証」として雇用主にパスポートを預け、適切な保護を得られていない実態を問題視。「返却されない場合もあり、出国や転職にも許可がいる。覚書がこうしたやり方を変える効力があるか注視する必要がある」と指摘した。
サウジ政府は昨年、国内の失業率悪化を受けて不法外国人労働者を一斉に摘発した。同国には昨年11月時点で、約10万人のインドネシア人出稼ぎ者が不法滞在していたが、これまでに約3千人が強制送還された。インドネシア政府はサウジ政府に対し、滞在期間の延長などの対策を求めていた。
労働者派遣保護庁(BNP2TKI)によると、海外で就労しているインドネシア人労働者は430万人で、サウジには120万人がいる。出稼ぎ者の送金額の最多国はサウジで17億ドル、次いで米国が2億ドルだった。
両国間では、雇用主などから虐待を受けた労働者が暴力から逃れるために雇用主を殺害し、死刑判決を受けるなど労働者問題が頻発している。現在までに33人が死刑判決を受け、インドネシア政府が同国に減刑などの措置を求めている。