「北九州型」でごみ管理 環境技術生かして メダン支援
福岡県北九州市がインドネシアで環境インフラ事業を積極的に展開している。北スマトラ州メダン市で先月、民間企業と廃棄物の管理改善事業を開始。産官民一体でアジアへの環境インフラ輸出の拡大を図る。
メダン市ではごみ廃棄量が増加傾向にある。ごみ最終処分場の収容能力も限界に近づく。同市によると、毎日約1千万トン以上のごみが廃棄され、うち約63%が生ごみだ。ごみ処理方法の確立や廃棄量の減量が課題となっており、廃棄物の管理制度構築が求められる。
そこで同市にモデル地区を導入。家庭ごみやパームオイル産業の廃棄物を堆肥にするコンポストセンターや、再利用可能なごみを回収し換金するごみ銀行などを設置する。さらに廃棄物処理関係者を対象にした研修を通じ人材育成も進める。メダン市環境局の担当者は「北九州市と協力し、環境都市のモデルになりたい」と意気込む。
同事業は日本国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業(地域提案型)の枠組みで実施。北九州市や九州大、企業では環境リサイクル事業を展開する新菱が参加する。期間は16年3月末まで。
北九州市は2009年、公害の克服過程で培った廃棄物処理などの環境技術を基にした都市モデル「北九州モデル」を策定。アジアの新興国で環境配慮型の都市づくりを支援してきた。水事業(カンボジア)やリサイクル事業(中国)で輸出事例がある。
10年にはアジア低炭素化センターを設立。13年9月までに東南アジアや中国で40件の事業を進めた。インドネシアでは事業15件を実施し、民間企業の進出も後押しする。東ジャワ州スラバヤ市では西原商事がごみ処理施設の拡大事業、西ヌサトゥンガラ州スンバワ島では小倉合成工業がヒマシ油精製技術の普及事業を展開する。
12年にはスラバヤ市と環境姉妹都市を締結。スラバヤ北九州スマートコミュニティプロジェクトや下水道の整備構想プロジェクトを計画した。
アジア低炭素化センターの担当者によると、地方自治体の先駆けとして環境インフラ輸出に注力する。「インドネシアを含むアジアの都市では環境問題の解決が急務だ。北九州市の環境技術を活用してほしい」と力を込める。(小塩航大)