アナス前党首を逮捕 ハンバラン汚職で 民主党に打撃

 ハンバラン競技場(西ジャワ州ボゴール県)建設事業に絡み収賄した疑いでアナス・ウルバニングルム前民主党党首が10日、南ジャカルタ・クニンガンの汚職撲滅委員会(KPK)庁舎に出頭した。KPKは同日夕、同氏を汚職撲滅法違反の容疑で逮捕した。疑惑浮上から2年半、民主党は大きな打撃を受けた。
 ハンバラン競技場事業はボゴール県スントゥールに陸上競技場など運動施設を建設する計画だった。民主党幹部だったムハンマド・ナザルディン氏(最高裁で禁錮7年の判決)らが事業に介入。2千億ルピアだった当初の予算を水増しし、12倍以上となる2兆5千億ルピアの予算案をつくり国会に承認させた。その水増し資金の一部は2010年5月に開かれた民主党党首選の買収資金に流用され、党首選に出馬したアナス前党首や当時のアンディ青年スポーツ相(公判中)が支持獲得工作のなかで党員にばらまいたとされる。アナス前党首はこの時、党首に当選した。
 逮捕後、記者団に発言を求められ「(逮捕は)ユドヨノ大統領にとって新年の贈り物になっただろう」と大統領への皮肉を口にした。
 昨年2月の容疑者断定後、これまで2回の出頭要請を拒否。KPKのアブラハム委員長は、今回も要請に応じない場合は強制連行も辞さない強い姿勢を見せていた。
 容疑者に断定された後、ユドヨノ大統領派との党内対立が表面化した。アナス前党首は自身の無実を訴える一方で党首を辞任。容疑者断定の背景にユドヨノ大統領の意向があるとして大統領派を批難し、大統領次男のイバス幹事長の収賄疑惑を暴露するなどした。前党首と大統領が表立って対立し、互いを中傷する事態に発展した。
 アナス前党首は金曜礼拝を終えた10日午後1時半ごろKPK庁舎に出頭。9月に新設した政治団体「インドネシア運動連盟(PPI)」の制服姿で現れ、記者団に冗談を飛ばすなど余裕を見せた。出頭要請に応じる場合、その後の勾留を予想してスーツケースなどで日用品を持参するのが通例だが、荷物を持っていなかった。無実を主張するパフォーマンスだったとみられる。(田村隼哉)
 【プロフィル】 アナス・ウルバニングルム 1969年7月15日、東ジャワ州ブリタル県生まれ。インドネシア大学修了(政治学修士)。97〜99年、最有力学生団体のイスラム学生連盟(HMI)代表としてスハルト政権崩壊時の学生運動を率いた。01〜05年、総選挙委員会委員。05年、民主党入りと同時に政治地方自治部会長就任。10〜13年、民主党党首。4児の父。

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