大統領夫妻周辺に照準 友人や親戚が政官業仲介 ハンバラン競技場建設の汚職捜査
ユドヨノ大統領夫妻と親密な関係にある友人の女性や大統領の親戚が、汚職事件で訴追された政府高官らに接触していたことが明らかになった。与党・民主党幹部らの関与を追及してきた汚職撲滅委員会(KPK)は、大統領周辺の人物が政・官・業を仲介したとの見方を強めている。
西ジャワ州スントゥールのハンバラン競技場建設をめぐる汚職事件の捜査で、アンディ・マラランゲン前青年スポーツ担当国務相=10月に汚職容疑で逮捕=が大統領周辺の人物の関与を示唆。大統領の親戚のウィドド・ウィスヌ・サヨコ氏や、アニ夫人の友人シルフィア・ソレハ氏らの名前を挙げた。
同事件で収賄罪に問われたアンディ氏の部下、デディ・クスディナル元同相事務所総務局長の公判に、シルフィア氏が9日、初めて公の場に姿を見せ、アニ夫人や大蔵省、同相事務所の高官との関係を次々に証言。今まで不明瞭だった同事件における大統領周辺人物の相関図の一端が明らかになった。
シルフィア氏の夫はユドヨノ大統領と陸軍士官学校の同期。友人の実業家アリフ・グナワン氏から依頼を受け、大蔵省予算担当者にSMSを送り、競技場建設事業を円滑に進めるための支援を要請。さらにスポーツ相事務所で同相秘書に面会し、同様の支援を求めたとされる。
シルフィア氏は証人尋問で大蔵省幹部へのSMS送信を認める一方、「予算担当者には会ったことがなく名前も知らなかった。実業家が用意した文案を、教えられた携帯番号に転送しただけだ」と犯意を否定した。
同相事務所の訪問についても、競技場建設事業での便宜供与を依頼したわけではなく、家具の調達計画の有無を聞いただけだと主張。動機を「私は単に友人を助けたかっただけだ」と説明した。
公判には、当時蔵相だったアグス・マルトワルドヨ中銀総裁も証人出廷した。アグス氏は大蔵省に提出された予算要求書には、本来署名するべきアンディ前スポーツ相ではなく事務次官の署名しかなかったと指摘。当時予算局長だったアニー・ラトナワティ大蔵副大臣が主導して予算案を承認し、書類の不備は、後になって初めて知らされたという。
アニー副大臣は、ユドヨノ大統領がボゴール農科大で修士号を取った2004年、ユドヨノ氏の担当教官を務めている。
競技場建設は国営ゼネコンのアディ・カルヤが受注。これまでの捜査では、受注の見返りにアンディ容疑者が同社に賄賂を要求し、現金40億ルピアと55万ドルを受け取った疑いが持たれている。競技場建設をめぐる不透明な金はアナス・ウルバニングルム前民主党党首にも流れたとみられ、KPKが裏付け捜査を進めている。(道下健弘)